美術・建築
小川和也×隈研吾【前編】
テクノロジーの進化が
建築を10倍面白くする!

ITと建築の融合について語る隈研吾氏(左)

テクノロジーによって、家電や自動車などあらゆるモノが進化を続けている。では、建築はどうか。日本を代表する建築家の一人である隈研吾氏が、建築の新たな可能性について語りつくすーー。

インターネットは建築を変えるか

小川:隈さんは、たとえば「アルゴリズミックデザイン」(コンピュータープログラムによって複雑な曲面や部材配置などを設計すること)のような新しい手法、テクノロジーを積極的に取り入れた建築をされていますが、テクノロジーと人間のクリエイティブとの調和について、どのように考えていますか。

隈:テクノロジーが面白くなると、クリエイティビティが触発されると思うんですね。人間って好奇心があるから、新しいテクノロジーが生まれると、それに応じて思考の経路も変わるし、モノの作り方も変わる。テクノロジーが進化してモノづくりがダメになる、調和がとれなくなるということはなくって、テクノロジーが面白くなるから建築も面白くなるという関係にあります。建築の世界でも、新しいテクノロジーに対するノリが悪くなると、クリエイティビティも落ちてくるような気がするんです。

小川:テクノロジーと人間のクリエイティビティの相乗効果ですね。

隈:まさにそういう感じで。

小川:家電、電子機器、各種消費財、自動車など、ありとあらゆるモノがインターネットにつながりつつあります。2020年までには数百億台のモノがインターネットとつながり、その世界市場も数百兆円規模になるという予測もあります。いわゆる、IoT(モノのネット化)と称されるものですが、建築物にも影響をもたらすと思いますか。建築物もネット化したりとか。

隈:僕が計算機科学者の坂村健さんと一緒につくった東大の建物なんかはまさにそういうものを目指していたんです。IoTが建築自体を変えてしまったら面白いと考えて、たとえば、教室の割みたいなものも、固定な間仕切りとかをなくしてしまって、授業の内容や集まり方によってその間仕切りが自由に変えられるようなことができたら、建物は小さくてすみます。IoTといっても、照明やエレベーターをコントロールするレベルだけではつまらないし、ワクワクもしないので。

小川:確かに、従来の建物内の壁というものが、「電子ウォール」みたいなものに取って代わることで、建物内の固定的な壁に柔軟性が与えられ、自由に間仕切りできるようになると面白いですよね。

「昼はオフィスに、夜は住居に変わる。そんな建物ができるかも」

隈:たとえばオフィスビルなんかは、昼は人で一杯だけれど、夜はガラガラなわけで、夜になったらそこに「電子ウォール」で新しい区画を設けて住居になり、夜はオフィスビルに人が住んでいるみたいなのも面白いなと。そうすると、都市の建物なんてこんなにたくさんある必要もなくって、コンパクトなんだけどもっと高度な機能と密度を持っている都市というものがあってもよいんじゃないかと。

小川:そういう建築が集まっている都市とか、面白そうですよね。

隈:そうですね。IoTもそういう次元で考えれば、画期的な変化を生めるんじゃないですかね。

小川:隈さんは、そういう次元にまでたどり着くと思われますか。

隈:思っていますね。昔は事務所ビルがあってマンションがある、そういう区分けがはっきりしていたけれど、だんだん変わっていくと。たとえばSOHOみたいなのはその走りで、全体としては事務所で、それが住む機能と混在していて、仕事も生活もできる空間になっている。その混在の仕方をもっと高度にテクノロジーでコントロールできるようになれば、将来オフィスビルと住居マンションを分ける必要もなくなるのではないかと。実は20世紀以前の都市って、そういう混然としたものだったんです。

小川:いまは建物もオンとオフで使い分けていますが、同じ建物の中でオンとオフを使い分けるような感じですよね。それによって、ワークスタイル自体も変わりますよね。テクノロジーによって、同じ空間の中でオンとオフをうまく使い分けることが可能になるかもしれませんよね。

隈:それは十分可能だと思いますね。

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