佐藤優のインテリジェンス・レポート「安倍晋三首相のウクライナ訪問」

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.062 インテリジェンス・レポートより
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【事実関係】
6月6日、安倍晋三首相はウクライナの首都キエフを訪問し、ポロシェンコ大統領と会談した。

【コメント】
1.
日本の首相がウクライナを訪問するのは、史上初の出来事で、本件訪問は日本のウクライナ重視を示すものだ。

2.―(1)
<首相は会談後の共同記者発表で、「力による現状変更を決して認めず、法の支配、主権、領土の一体性を重視していく」と述べ、ロシアによるクリミア併合を認めない考えを強調した。

日本側の説明によると、首相はポロシェンコ氏との会談で「日本はG7の連帯を重視している。制裁措置を維持しつつ、対話と圧力を通じ、ロシアが親ロ派に対して建設的役割を果たすよう働きかけている」とも述べたという。>(6月7日 朝日新聞デジタルより)

2.―(2)
「対話と圧力を通じ」というのは、日本が北朝鮮に対して用いるフレーズだ。このようなフレーズを安倍首相が用いたことは、ロシア側を刺激することになる。

2.―(3)
安倍晋三首相のウクライナ訪問について、現時点でロシア側は、日本・ウクライナの二国間問題として静観する姿勢を示している。

ただし、世耕弘成官房副長官が6日、キエフで行った記者ブリーフィングにおいて、ポロシェンコ大統領による「われわれには共通の隣国がある。その隣国は、ウクライナにとってはクリミア併合やウクライナ東部の問題があり、日本にとっては北方領土問題を生じている」との発言をあえて紹介したことについて、日本はクリミア問題と北方領土問題をリンケージし、対露批判を強めるのではないかと警戒している。

3.
8日、安倍首相は、主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)の終了後にドイツのミュンヘンで記者会見し、「北方領土の問題を前に進めるため、プーチン大統領の訪日を本年の適切な時期に実現したい」と述べた。安倍政権が一方においてロシアに敵対し、他方においてロシアを誘うという錯綜したシグナルを送っていることに対して、クレムリン(露大統領府)は当惑しているものと思われる。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.062(2015年6月10日配)より