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19歳の天才ストッパー 楽天・松井裕樹の「青春と才能」
必見!美しすぎる「空振り三振」

週刊現代 プロフィール

もうひとつ、実は医学的な理由もあるんです。僕が以前から親交のある順天堂大学大学院病院管理学教授の小林弘幸先生にマツの血流検査をしてもらったんです。すると、マツは平常心を司る副交感神経が優位な自律神経の持ち主で、厳しい場面になればなるほど力を発揮できる、と診断された。つまり、もともと抑えに向いている。小林先生からも『絶対に抑えがいい』と言われました」

すべてをプラスに考える

大久保監督は、沖縄・久米島から金武町にキャンプ地を移した2月13日、「抑え・松井」の構想を本人に通達。ルーキーイヤーの昨年、松井は制球難から四球を連発し、自らを見失って、二軍落ちも経験。4勝8敗に終わった悔しさから、先発での再起を目指していた矢先だった。当時の心境を、松井が振り返る。

「戸惑いはゼロではなかった。でも監督から『チームのために必要だから、後ろ(抑え)で行ってくれ』と熱く言われ、『チームのために』という言葉が心に響いて、頑張ろうと思いました」

すぐに切り替える能力を、松井は高校時代にすでに身につけていた。桐光学園の恩師・野呂雅之監督が明かす。

「松井には、すべてをプラスに持っていける順応性がありました。いいと思ったことは続けていくし、できないことは、なんとかやろうと努力する子でした。

松井に限らず、うちの学校では生徒に『わからなかったら、わからないと言えよ』と指導してきました。松井は、納得するまで答えを求めようとして、自分がわからないことを他人に聞くことができる素直さも持っていましたね」

松井は沖縄キャンプ終了後、オープン戦が本格化するまでの間に、中継ぎ、抑えの経験がある先輩に「弟子入り」した。'13年の日本シリーズで救援経験があるエース則本昂大の部屋も訪ねた。

「則本さんや辛島(航)さんは自主トレも1ヵ月一緒にやらせてもらいましたし、何とか気持ちを整理したかったので、ブルペンでの過ごし方などについて、いろいろ話を聞かせてもらいました。

則本さんから、『松井は歓声を楽しめる人間。ビジターで相手が盛り上がっている状況で出て行って、それを抑えてみたいやろ?』と聞かれて、僕は、『(相手の歓声を)黙らせたい』と答えました。則本さんと話すと、最後に大事なのは気持ちなんだと確認できて、抑えとしてやっていく不安が少しずつ消えていきました」

松井は「抑え一本」の覚悟を決めてから、自分の中である誓いを立てた。

「とにかく『ゼロ』に抑えよう、と。抑えに指名された当初は『チームに勝ちがつけばいい』と考えていましたが、(大久保)監督から『ゼロで行け』と言われて、意識するようになりました」

今季12試合目の登板となった5月9日のソフトバンク戦は2-2の9回から登板。9回、そして10回とサヨナラ負けのピンチを背負ったが、無失点で乗り切った。