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「どケチ」で有名「経営の神様」稲盛和夫は変心したのか
〜故郷にポンと20億円寄付〜

〔PHOTO〕gettyimages

京セラ、KDDIを作り、JAL再建に成功した「経営の神様」。企業買収で救った会社も数知れない。経営の根幹には常に「どケチ」哲学があった。だが、83歳を迎えたカリスマに心境の変化が—。

1円たりとも無駄にするな

「会長室を訪ねる用事が何度かあったのですが、机の上にビッグマックや吉野家の牛丼が置いてあるのを見たことがあるんです。秘書の方に後で『誰が食べるのですか?』と聞くと、『会長が召し上がる』って。80歳を過ぎてジャンクフードですからね。驚きましたよ。

おカネなら腐るほどあるんですから、高価なお弁当や健康的なものを食べているとばかり思っていました」(JAL社員)

経営再建を託され、JALに会長として乗り込んだ稲盛和夫氏(83歳)は、当時、こんな昼食を摂る姿を会長室でしばしば目撃されたという。

一代で京セラを世界的メーカーに育て上げ、NTTの向こうを張って作ったKDDIを軌道に乗せ、JALの再建を実現させた「経営の神様」。創業した京セラ株を約1121万株保有し、その時価総額は750億円に迫る。そんな稲盛氏だが、金銭感覚は「どケチ」なことで有名だ。

稲盛氏の経営哲学をJAL社員のために解説した『JALフィロソフィ手帳』(非売品)にはこんな一節がある。

〈経営することは一見難しく思えますが、シンプルに考えれば、いかにして売上を大きくし、いかにして経費を小さくするかということに尽きます〉

〈経費を最小にするにあたっては、全員がいくら経費を使っているかを肌感覚で理解できることが重要です。(中略)そうすれば職場の全員が、どの経費をどう減らせばいいか、具体的な対策を考えることができるのです〉

稲盛氏はこうした考えを京セラやKDDI、JALの社員たちや、自身を慕う経営者の勉強会「盛和塾」のメンバーに折にふれて伝えている。

JAL 虚構の再生』の著書があるジャーナリストの小野展克氏が言う。

「稲盛さんがおカネの使い方に異常なほど細かい指示を出す、という話はよく聞きました。会社更生法を適用された後のことですが、JALのボストン便が就航になったお祝いのイベントで和太鼓を用意した際、『太鼓の数が多すぎる』と言ったり、『ミーティングのときの弁当が豪華すぎる』と指摘したりしたこともあったそうです。稲盛さんにとって、無駄は1円たりとも許せないのでしょう。

経費にこだわるのは経営者として当然ですが、経営トップが口を出す内容としては細かすぎるように思います。ただ、JALの場合は丼勘定が経営の破綻を招いたのだから、こうした細かい部分まで締め上げる姿を見せて、社員の意識改革を促したとも言える。あれだけの短期間で立ち直ったのですから、パフォーマンスは成功したと言っていいでしょう」

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