【憲法 その5】 衆議院の優越を確立し、世代別選挙区を実施し、緊急事態条項を導入せよ!
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2007年から2013年まで毎年首相が変わった。主因は、衆参がねじれていたことだった。

2007年7月の第21回参議院選挙で自民党が敗北し、衆参にねじれが生じた。当時安倍晋三総理はその後1ヵ月余りで首相を辞任、福田康夫、麻生太郎と約1年の短命政権が続き、民主党に政権を譲り、鳩山由紀夫内閣が誕生することとなった。その民主党政権も、2010年7月の参院選に敗北すると再びねじれが生じ、菅直人、野田佳彦両内閣ともに1年余りの短命政権だった。

憲法は確かに、予算や条約等については衆議院の議決を国会の議決とする「衆議院の優越」という制度を準備してはいるが、法律案については、衆議院の優越はない。従い、関連法案が参議院で野党に反対されて可決できずに、予算執行ができない弊害が実際に生じてきた。

2013年7月の参院選に勝利した第2次安倍内閣はねじれを解消し、安定した政権運営を行っている。だが、与党が参議院の比較第一党であったとしても起こりうる「衆参のねじれ」は政治と行政の停滞を引き起こす、日本の政治の仕組みの大きな弊害である。

日本国憲法は前文の冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するとし、第4章「国会」で、41条~64条まで詳細に国会と国会議員に関して定めている。それだけ、憲法の中で、間接民主主義の根幹である国会が重要であるということだ。今回の行動では、国会と緊急事態条項に関して議論をする。

冒頭で述べた通り、国会改革の本丸は、衆議院と参議院の問題だろう。国会の機能不全を防止するためにも、憲法上で明確にあるべき姿を明文化する必要がある。

今の日本の二院制の問題点は、

1)ねじれ問題:権限面で衆議院の優越が徹底されていないため、衆参がねじれた場合に、政治の停滞を引き起こすこと。

2)選挙制度:衆議院と参議院とでは、選挙区の違いは多少はあれど、比例代表を併用している点が共通するなど選挙制度がほとんど変わらない。また、参議院の一票の格差の問題がなかなか解決できないでいる。

3)議論の同質性:衆議院と参議院とで議論する内容にほとんど差が無い。その結果、良識の府として期待されていたはずの参議院の議論が盛り上がらずに、政策論争よりも政局が中心となってしまいがちだ。

では解決策は何か。「一院制」という答えがストレートである。一院制のメリットは、迅速な政治決定が可能となることであろう。諸外国の国会制度をみると、一院制を採用している国家は113ヵ国もある。一方、二院制は78ヵ国だが、先進国(OECD加盟国)をみると二院制が19ヵ国、一院制が15ヵ国。G8(イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシア、日本)に限れば、すべて二院制である。

さらに詳しくみていくと、G8の中でも、日本とイタリア以外は、両院の権限や議員の選定方法を差別化しており、事実上一院制のような国が多い。例えばイギリス、ドイツ、フランス、カナダ、ロシアは、第一院(下院)は直接選挙だが、第二院(上院)は任命や間接選挙を採用し、権限を第一院に集中させている。これによって、二院制のデメリットである政治の停滞やスピード感の欠如を防止し、行政や第一院のチェック機能を持たせている。

よく知られるように、アメリカは下院も上院も直接選挙だが、上院は人口数に関わらず、各州からの代表2人というように選出方法を工夫している。しかし、両院の権限が原則対等なので、しばしば「ねじれ」で政治の停滞を招いている。

こう見ていくと、諸外国の成功と失敗にならって、二院制を維持し、参議院のチェック機能というメリットを生かしながら、

1)衆参の「権限」に差をつける(衆議院の優越を強化)

2)衆参の議員の「選出方法」に差をつける

3)衆参の「役割」に差をつける

ことが現代の統治機構論としての最適解となるであろう。せっかく憲法を改正するのだから、諸外国の事例をもとに現時点で考えられるベストな国会のあり方を提示したい。

1990年代に実施されたいわゆる「政治改革」は、小選挙区比例代表並立制の導入と政党交付金制度の導入であった。しかし、一票の格差に関する違憲判決は最近でも続発し、税金を投入して多額の交付金を受け取る「政党」も憲法になんの根拠も書かれていない状態が続いている。

また、近年の世界では、国際紛争も多発し、国際テロも過激化している。加えて、東日本大震災など想像を絶する大規模な自然災害も数多く発生している。国家がこういった緊急事態に見舞われた場合、憲法上いかなる措置を講じることができるのか。政府はどういった手続きで権限を行使し、国民の権利はどう守られ、どう制限されるのか。

このことに関して現行の日本国憲法はなんら規定していない。したがい、緊急事態条項に関してもこの場で憲法に加えることを提案したい。

憲法改正は、抜本的な国会改革、真の政治改革の絶好のチャンスといえる。ぜひとも積極的に、前向きに憲法改正を捉え、政治改革を進めたいものだ。

1. 衆議院の優越を強化して、法案の決議を迅速にできる体制を構築せよ!

まずは、衆議院と参議院の権限の問題から論じていこう。現行憲法では「衆議院の優越」として、第59条から61条で次のように規定している。

・第59条→法律は衆参で議決が異なった場合、衆議院の3分の2以上の再可決で成立。

・第60条→予算は衆議院先決、衆参の議決が異なった場合または参議院が30日以内に議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となる。

・第61条→条約締結の国会承認に関しても予算と同様とする。

以上の3点である。しかし、近年、ねじれ国会で予算は成立したものの、予算の裏付けとなる赤字国債の発行を認める特例公債法が参議院の反対で成立せず、予算執行に遅れが生じ、それも一因となって、毎年総理が交代する事態となっていることは、冒頭に述べた通りである。

そこで衆参の権限の差別化に関しては、シンプルに衆議院の再可決を3分の2から2分の1に引き下げるのがよいだろう。こうすると、事実上すべて衆議院の議決が国会の議決となり、迅速な政治決定が可能となる。しかし、一方でそうなると問題点が2つ出てくる。

1つ目の問題点は「それでは参議院の存在価値が皆無となる」という制度的問題だ。このため、衆参の役割に差をつけ、参議院は、「行政のチェック」と「人事」を担う院としてはどうか。これについては後述する。

次の問題点は、憲法改正の現実論だ。現職の参議院議員と話をすると、「再可決を2分の1にする憲法改正案など絶対に参議院を通過しない」という。参議院議員の立場からすれば、自らの存在意義をなくす改正であり、反対が明らかだからだ。実際、新聞や民間団体の憲法改正案では衆議院の再可決条項2分の1が採用されているが、自民党案では、3分の2と現行のままになっている。

しかし、まさに良識の府である参議院にも、憲法改正に際して国のあり方を真摯に考えて欲しいものだ。現実論としては、憲法改正の経過措置として、各政党で衆議院の選挙区に参議院議員を含めた予備選を実施して、希望する現職参議院議員にも衆議院議員として立候補できるチャンスを与えるのが望ましい。

(衆議院の優越)
第59条
第1項 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
第2項 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二二分の一以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
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