マンズワイン 茂木信三郎社長「ピノ・ノワールでワインをつくりたい。原産地以外では栽培が難しいと言われていますが、いつか、最高の品質で育て上げるのが夢です」

近年、海外のコンクールで高く評価される日本のワイン。なかでも、日本産の葡萄のみを使った銘柄『ソラリス』などで権威ある賞を多数獲得しているのがマンズワインだ。1962年にキッコーマンが勝沼洋酒という社名で創業し、現在もキッコーマンの役員が社長を務める。温厚な人柄で、根っからのワイン好きである茂木信三郎社長(67歳)に聞いた。

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もぎ・しんざぶろう/'47年、千葉県生まれ。'70年に慶應義塾大学商学部を卒業し、キッコーマンへ入社。数年の国内勤務の後、アメリカ・ウィスコンシン州の現地法人に出向。その後、ドイツ・デュッセルドルフで欧州販社総支配人などを歴任し、'05年執行役員、'09年より現職。新古今和歌集、ギリシャ神話にも興味を持つ

日本人の幸福

日本のワインには「国産ワイン」と「日本ワイン」があります。「国産ワイン」は海外から輸入した葡萄果汁やワインも使って国内で醸造・ブレンドしたワイン。一方「日本ワイン」は、「国産ワイン」の中でも、日本で栽培した葡萄だけを醸造したワインです。弊社で言えば『ソラリス』が日本ワインの代表銘柄で、本場欧州の一流ワインに肩を並べるだけでなく、評論家の方からは、日本食にもよく合うとの評価をいただいています。なぜなら、おいしくない葡萄は、どれだけ頑張っても、おいしいワインにはならないからです。
根本を問う

ワイナリーは、山梨県の勝沼と、長野県の小諸にあります。勝沼では主に甲州種を農協経由で農家から購入しています。また小諸は気候と風土がワイン造りに適しており、自家農園や契約農家でヨーロッパの品種を栽培しています。葡萄の味を高めるため、房に直接、雨がかからない栽培法を弊社が開発するなど、葡萄のおいしさにこだわっています。

きっかけ

キッコーマンは50年以上前に、米国で「テリヤキソース」の発売を開始しました。レシピは醤油にワインと甘みとスパイスを加えたもの。ならば味の向上のためにも自社でワインを生産したい、と生まれたのが弊社なんです。

曲水 マンズワイン小諸ワイナリーで開催された、和歌の宴、「曲水茶会」の様子。社長は詠み手として参加

出会い

実は私も、'84年から'02年まで20年近く、米国や欧州など世界に醤油を販売する仕事をしていました。たとえばヨーロッパでは、日本のレシピを伝えるだけでなく、現地で醤油を使ったレシピのコンテストを開催するなどしました。

単なるシェア拡大でなく、西洋と東洋の文化が出会い、現地の食文化がより豊かになるよう考えていました。これが、世界各国で醤油を使ったメニューが生まれ、新しい食文化の開花に結びついたのだと感じています。

毛糸玉

様々な尊敬する先輩と出会いました。今でも印象に残っているのは、豪快なのに、毛糸やコードが絡まっているのを見るとほどきたがる上司です。周囲に「切ってしまえばいいのに」と言われても「そうじゃないよ」と楽しそうにほどいていく。一緒に働くうち、普段は決断力があるのに、たまになかなか結論を出さない時があって、私はふと気付いた。

彼は何も言いませんでしたが、毛糸の話は「こんがらかった糸を切るのでなく、じっくりほぐすことも必要だ」というメッセージだと思ったのです。経営にも、即決すべき時と、こんがらかった糸をほどいていくべき時がある、と解釈しています。

浮かれず

「understated」という言葉が好きです。ご承知のように派手さを抑えた、地味な、控えめな、という意味で、私は「必要以上の自己顕示はすべきでない」「よいことがあった時、成功した時こそ浮かれないでしっかり足元を見て、控えめにし、足をすくわれないように」という意味だと理解しています。