米ネット中立性ルールが施行され、ブロードバンドにも冬が到来か
新ネット中立規制を策定したFCCのトム・ウィラー委員長 (NAB Show 2015で筆者撮影)

2015年2月26日に米連邦通信委員会(FCC)が可決したオープン・インターネット規則、俗称ネット中立性ルールが、今週末いよいよ施行となる。過去10年以上にわたり、3人のFCC委員長が取り組んできた同ルールは今回、ブロードバンド事業者を米電気通信法における通信サービス(タイトルII、コモンキャリア)と再定義し、固定電話と同じ最も厳しい規制を可能にした。米ブロードバンド業界は同ルール施行で冬の時代を迎えようとしている。

FCCの規制運用に根強い不信感

「(コモンキャリアに)再定義をしたからといって、ブロードバンドを電話同様に規制するつもりはない」

FCCのトム・ウィラー委員長は2月、オープン・インターネット規制の可決成立を受け、その運用は最小限に留めることを強調した。しかし、同ルールに反対するブロードバンド業界の不信感は根強く、業界団体や関連企業が相次いで差し止めの裁判を起こしている。

ネット中立性規則は①ブロック禁止、②差別的取扱いの禁止、③透明性の確保という3本柱からなり、競合相手のコンテンツや機器を制限したり、特定のコンテンツやサービスを差別することを禁じている。また、ネットワークのパフォーマンスやサービス内容の開示を義務づけ透明な運営を求めている。

ブロードバンド業界は、こうした消費者保護そのものに反対しているわけではない。細かい異論はあるにせよ、彼らが懸念するのは強力な規制権限を握ったFCCによって「ブロードバンドの健全な成長や技術革新が妨げられる」という規制当局への不信感だ。

たとえば、差し止め訴訟を起こしたAT&Tは「新ルールによって膨大な報告義務が発生しコストアップにつながるだけでなく、サービスやネットワーク運用の自由度が狭まる」と抗議している。

〔PHOTO〕gettyimages

一方で、AT&Tは490億ドル(約6兆1,500億円)で衛星テレビ放送のDirecTV(業界トップ)を買収しようとしている。同社が買収を発表したのは14年5月。当時のネット中立性規制は今回施行される内容よりも緩やかで、AT&Tはそれを前提に買収承認を狙っていた。業界関係者も、通信と放送という異業種間の買収ということもあり、すみやかに買収承認がでると予想していた。

しかし、2月にFCCが新中立性ルールを可決したあと、同買収の審査は予想以上に長引いている。業界関係者の間で「FCCはAT&Tが新ネット中立性規制を承認するまで、買収を認めないのではないか」との観測が広がっている。

もし、FCCそうした内容をDirecTV買収の承認条件に加えれば、ブロードバンド業界の政府に対する不信感はますます深まることになる。

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