【有料会員限定記事】私たちはいま、技術、労働市場、地政学の破壊的屈折点の只中にいる

―ヒラリー、フェイスブック、そして無秩序からの逃亡(文/トーマス・フリードマン)
〔PHOTO〕i-stock

 次期大統領任期中に噴出するパラダイムシフト

今回の米大統領選挙キャンペーンは、非常に早くはじまった。しかし、ほとんどの候補者たちが、将来はもちろん、現在の重要な問題についてでさえ関与を避けようとしている様子に驚くばかりだ。

ヒラリー・クリントンは、国務長官時代に交渉を手掛けた、太平洋諸国との自由貿易協定とイランとの核協定という大きな2つの問題についての立場を明確にしようとしない。一方の共和党では、ジェブ・ブッシュのキャンペーンが、元大統領の兄の立場を踏襲すべきか否かで行き詰まっているようだ。またマルコ・ルビオは、包括的な移民改革に反対する以前は、それを支持していた。ランド・ポールとバーニー・サンダースの両上院議員は、明確なイデオロギーの実現に意欲を燃やしている。

しかしほかの候補者たちについて言えば、現時点で説得力をもって明らかにされているのは、自分が大統領となるべき理由ではなく、大統領になりたいという熱意ばかりだ。

しかし、そんなことが長続きしないのは、新聞の見出しを見れば明らかだ。私たちは今、技術、労働市場、地政学上の重大な破壊的屈折点の只中にいる。そこでは、政府、国民、雇用主、従業員の間での労働および社会契約の将来に関する問題が根本的に問い質されるだろう。そして次期大統領の任期中に、こうした問いが噴出することになる。

その兆候はどこに見られるのか?――今年のニュース記事のなかで見られた最も優れた導入パラグラフの候補として、私は今のところ、ハバス・メディアの幹部であるトム・グッドウィンが書いたものを挙げたい。これは3月3日のTechcrunch.comに掲載され次のようにはじまる。

<世界最大のタクシー会社であるウーバーは、車を1台も所有していない。世界で最も人気があるメディアであるフェイスブックは、コンテンツをまったく作っていない。世界最大の資産価値を持つ小売業者アリババは在庫ゼロだ。そして世界最大の宿泊施設提供者のエアビーエンビーは、不動産を一切所有していない。何か面白いことが起こっているようだ>

まさにその通り。「所有することの価値とは何か」という問いについて、今、答えが大きくシフトしはじめたところなのだ。上記の企業すべてに共通することは、信頼のプラットフォーム、もしくは行動のプラットフォームを構築したことだ。

前者は、家の空き部屋や車の空席、またはノースダコタの小さな小売業者と中国の小規模製造業者を商業的につなぐことなど、これまで人々が供給対象と考えなかったものの需要と供給をマッチさせるプラットフォームだ。

後者は、小売業者や広告主にとって非常に大きな価値があるデータのスピンオフするプラットフォーム、または、普通の人が運転、客のもてなしなど、およそ想像可能なあらゆるスキルに関する評判を築き、グローバル市場で自分を売り込めるプラットフォームだ。

これは、コンピューティング能力、ストレージ、ネットワーキング、センサー、ソフトウェアの開発や相互運用性が飛躍的に進歩した結果によるものだ。これにより、膨大なデータを収集してソフトウェアで処理し、以前には考えられなかったようなスピードと規模でパターンを発見することができるようになる。そしてこれは、非常に多くのものから一度に抵抗を取り除いてしまう。

対象範囲は、タクシーに手を上げることから、アフリカ中央部マリのティンブクトゥにある誰かの家の部屋を予約すること、食料品を買うこと、その人がどこにいようがどこからでもモノを教えてもらうこと、3-Dプリンタで飛行機の部品を6ヵ月ではなく、たった1週間で設計することに至るまで、非常に広範囲にわたる複雑さへの対処が、無料になりつつあるのだ。

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