【有料会員限定記事】ブランソン流 最高のアイデアの引き出し方(文・リチャード・ブランソン)
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「模倣」と「盗用」は違う

「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」という格言は一般にピカソが言い出したとされています。そして多くの人々はこれを、他の芸術家が一生懸命生み出したアイデアをピカソが図々しく模倣した、という意味だと長いあいだ曲解してきました。

しかしこれほど真実から遠いことはありません。「模倣」と「盗用」はまるで違います。模倣する人は、単に複製するだけですが、盗む人は、現在的な解釈を施してそれを持ち去る。つまり結局は、盗んだ当人が作るのです。

誰でも本当に新しいアイデアを思いつくことなどめったにないとこの格言は気付かせてくれます。私たちはみな環境の所産です。先行する人々から借用し、同じ道をたどるなかで先人たちの教訓から恩恵を受けているのです。単純化すれば誰もがほかの人々から影響を受けているわけです。

アップルの共同創立者スティーブ・ジョブズは、ピカソの言葉の意味を知っていました。かつてあるインタビューでこう明言しています。「素晴らしいアイデアを流用することに対して、アップルの誰もが恥じることはなかった」。

ヴァージンのわれわれのチームは、独特のアイデアでヴァージンというブランドを築きました。いま現在の製品やサービスが不十分な産業に目を付け、際立つ提案でそのギャップを埋め、そこに誰でも分かるヴァージンマークを貼り付ける、というわけです。

例えばヴァージンレコードをはじめた時、レコードの販売という業態はなんら新しいものではありませんでした。しかしわれわれは、そのプロセスを合理化し、より簡単に音楽にアクセスできるようにしました。航空産業分野に参入した時も、飛行機旅行はまったく新しいものではなかったのですが、特にカスタマーサービスという点では、その潜在力を十分には発揮していませんでした。そこでその解決に専念することで航空産業を破壊的に革新したのです。

対話や経験からアイデアが閃く

私たちの最上のアイデアは、たいていはイライラさせられた経験が母体となっています。しかし最近では、素晴らしいコンセプトを孵化させるためにテクノロジーを利用しています。ウィークデーは、自分のブログに少なくとも1日2回は投稿しますし、Facebook、LinkedIn、 Google+、 Twitter、Vineなどにもメッセージをアップします。この投稿が議論のきっかけを作ることもよくありますし、フィードバックや苦情や対話を引き起こすことも頻繁にあります。

ここ数年、これらの対話は刺激的な多くのアイデアを生みました。どの断片情報が刺激的な新事業提案へと変化するかを考えながら、コメントを読むのはじつに楽しい時間です。
これらの対話が世界中に展開している事実は大きなメリットです。これまでは、ある国の文化的な背景を知りたいのならば、航空券を手配する必要がありました。しかし今は、単にブログをチェックするだけで良いのです。オンラインでの対話から生まれる事業案のなかには、特定の国にしか通用しないものもありますが、多くは国境を越えて移植ができ、地球規模の巨大なインパクとを秘めています。

個人的にアイデアについて議論したり、私のオンラインプロフィールに寄せられたコメントを閲覧していない時は、IdeaPodを覗くのが好きです。IdeaPodはアイデアを共有したり、協力し合うためのソーシャルメディアのプラットフォームで、昨年末にこのサイトの創設者と会って以来ハマっています。お互いのアイデアをやりとりできる機会をウェブ上に提供することで、IdeaPodは、誰でも画期的なコンセプトに遭遇する機会を増やせるようにしたのです。

数週間前にこのサイトにログインし、次にヴァージンがどの事業分野に参入すべきか議論をしていることに気づきました。そのアイデアは低炭素燃料から自動車の相乗りの効率化やオンライン教育計画の実行までさまざまでした。私たちはすでにそこで言及されたいくつかの事業をはじめていますが、ほかにも興味深いアイデアがあり、ぜひ検討してみたいと思いました。

もしあなたが、新しいアイデアを探している起業家なだば、イノベーションとは果てしない探求であることを忘れないでください。製品やサービスで卓越することを至難で、誰からもずっと承認され続けることは不可能です。だからこそ、人々の希望や失望や考え方に耳を傾ける必要があるのです。

ブログをはじめ、ソーシャルメディアを経験してください。起業家たちの拠点やコーヒーショップやパブに足を運んでください。質問し議論を持ちかけ会話に参加してください。
そして自分にこう問いかけるのです。――人々が話題にしているのは何だろうか? 友人や家族の話題は? 人々がいま熱中しているのは何だろう? 最近話題のニュースは何か? 先日読んでおもしろいと思った記事にはどう書いてあった? それを製品やサービスに応用できないか?

あなたが自分の目を見開き耳をそばだてているなら、いつか素晴らしいアイデアを思いつくはずです。しかし忘れないでください。模倣してはいけません。自己流に転用するのです。

(翻訳/オフィス松村)