原発大量稼働を前提とした「温暖化ガス削減目標」。国民は納得できるか
ドイツで開かれたG7に出席した安倍首相夫妻

安倍晋三首相は、ドイツで6月7、8の両日に開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、温暖化ガスの排出を2030年度までに2013年度比で26%削減するという目標をお披露目したはずだ。

この新しい目標は、いきなり外交交渉で決まった過去の目標とは異なり、国内でそれなりの議論を経て策定された経緯がある。それだけに、首相はサミット前に、「無責任な、根拠なき『数字』ではなく、具体的な対策や技術の裏付けを伴うもの」であり、そのレベルも「国際的に遜色のない野心的な目標」だと自画自賛してみせた。

しかし、首相の言葉とは裏腹に、3つの大きな疑問が解消されていない。

鳩山政権のトラウマ

その第1は、目標の達成には相当数の原発を稼働期間の原則(40年間)が過ぎても運転する必要があり、そこに国民的なコンセンサスがないことから、目標そのものの実現性に疑問符を付けざるを得ない点だ。第2は、国内の稼働原発がゼロになり、温暖化ガスの排出量が跳ね上がった2013年度を基準年とすることによって、2030年度までの削減率を大きく見せる手法がとられており、諸外国の理解と信頼を得られるか疑わしい点である。そして第3が、新しい目標が世界規模で見て実効性のある温暖化ガスの排出削減に繋がるのかという疑問だ。

国策としてみた場合、日本の温暖化ガス削減目標には、決定過程に大きな問題があったケースが2つある。最初は、「2008年度から2012年度までの期間中に1990年度比で6%削減する」という目標だ。1997年12月に京都で開かれたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)の外交交渉の場で、議長国として取りまとめのために大幅な譲歩を余儀なくされ、国内での議論と検証作業のないまま、いきなり決まったものだった。この目標は、リーマンショックに伴う経済の停滞のお蔭で、かろうじて達成された。

2つ目は、「2020年度までに1990年度比で25%削減する」という目標だ。こちらは、首相就任を目前に控えていた鳩山由紀夫氏が2009年9月の都内の講演で突然表明したものである。やはり国家としての実現可能性の検証が抜け落ちていただけでなく、対外的なアピールが下手で諸外国から不当に低い評価しか得られなかった。鳩山氏は首相就任後、同案を正式に政府目標に格上げしたものの、東日本大震災の影響もあって、同じ民主党の野田政権時代に事実上撤回されるという論外の結果に終わっている。