世界一競争の激しいNYで俳優を続ける意義とは? チャンスを広げるべく「アメリカ人」役を目指す---俳優・本田真穂【後編】
ニューヨークを舞台に「挑戦」する日本人
俳優・本田真穂さん

ニューヨークを舞台に"挑戦"する日本人をご紹介する当企画。ニューヨーク在住のフリーライター・公文紫都が、さまざまなジャンルの「挑戦者」に話を聞いています。第一回は、俳優の本田真穂さん。大学生の頃から大手芸能事務所・オスカープロモーションに所属し、雑誌やCMのモデル活動、ドラマ出演などを行ってきましたが、安定していた日本での芸能活動を辞め、自らの意思で2009年に渡米。世界一競争が激しいと言われるニューヨークで、俳優として挑戦するためでした。

以来、6年間で数々のオーディションを受け、現在はアメリカの人気テレビドラマに出演するなど、確実にキャリアアップを続けています。今はまだ「日本人」として配役されることが多いそうですが、これからの夢はコンプレックスを持っている英語を克服し、「アメリカ人(アジアンアメリカン)の役を勝ち取ること」。スカウトが絶えなかったという中高時代の話から、競争激しいニューヨークで仕事を続ける理由まで、俳優・本田真穂の挑戦を聞きました。前編はこちら

ニューヨークを拠点にするメリットは、「前に進めている実感」を原動力にできること

日本にいる頃は、俳優は「見た目が良くて」「才能と感性が豊かで」「売れている」人たちだと思っていた本田さん。本格的にモデルから俳優に転身したいという夢はありつつも、「私には無理かもしれない」と半ば諦めていた部分もあったそうです。しかしニューヨークでは、大学で演技セラピーを教える授業があるほど、演技が「身近な芸術」として捉えられています。そんな環境に身を置き、学校で技術として演技を叩き込まれていくうちに、本田さんも徐々に自信を持ち始めました。

「日本ではオーディションに落ちてしまったら、解決の糸口が見えず、どうしたら合格するの? ダイエットすれば良いの? と間違った方向に落ち込んでいきがちでしたが、ニューヨークではブロードウェイをはじめとし、一流の芸術やアートがそこら中に転がっているので、モチベーションが絶えることはありません。それに、技術の習得先もいくらでもあります。ニューヨークで一流の芸術に触れていると、いつも自分が向上してそこに近づいているような気になれるんです。もちろん英語は第二外国語ですから、ネイティブ・スピーカーの俳優に比べアクセントはありますし、色々な点で後れを取っているのは事実です。けれど、そうした後ろ向きな気持ち以上に、『前に進めている実感』を原動力にできるところが、ニューヨークを拠点にするメリットですね」

そうは言っても、ここはニューヨーク。世界一競争の激しい街です。特に俳優は、厳しい世界のはず。俳優業一本で生活できている人は、ほんの一握りではないでしょうか。本田さんも、「ニューヨークで暮らす俳優の中には、副業をしながら生計を立てている人も、夢半ばで諦めて故郷に帰る人もたくさんいます」と説明します。

競争の激しいニューヨークで俳優を続ける意義

外国で暮らすにあたり、もうひとつの課題となるのは「ビザ」ですが、「グリーンカード(アメリカ永住権)」を取得している本田さんは幸い、その問題はクリアしています。とはいえビザは生活を保障してくれるものではないので、金銭面での課題は常に残ることでしょう。ニューヨークはざっと、日本の1.5~2倍の生活コストがかかる街です。このような過酷な状況下で、俳優を続ける意義とは何なのでしょうか。

「ニューヨークに限らず、どこにいても俳優業で生計を立てるのは容易ではないと思います。実際、ブロガーとして参加している『ハフィントン・ポストジャパン』でニューヨークの俳優事情について紹介したとき、日本でも副業をしている俳優はたくさんいると、経験談をシェアしてくれた同業者もたくさんいました。

ニューヨークはとりわけ厳しい環境かもしれませんが、それでも私たちがここで頑張れるのは、先ほどもお話した通り、落ち込んだときにブロードウェイなど一流の芸術に触れてモチベーションアップできることや、その心意気でクラスやレッスンに励んで技術アップできる魅力があるからです。たとえ気持ちが沈む出来事があっても、次のチャンスに賭けて再挑戦しよう! というオプションであふれているのは、ニューヨークならではでしょう。

また、他人の言葉や判断基準に左右されず、自分の内面に意識を集中させ、その結果向上を続けられるのは、外国という環境に身を置いているからだと思います。外国にいる限り逃げ場がないですし、それに、母国を離れるだけの覚悟を決めて来ていますからね。ニューヨークには、私と同じような苦労や悩みをシェアできるフリーランスやアーティストの友人がたくさんいるので、いつも良い刺激をもらえるところも、モチベーションの維持につながっています」