戦争法案審議の傲慢と欺瞞
『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より

〔PHOTO〕gettyimages

安保関連法案の審議が始まった。
憲法改正に匹敵する内容の「法律」10本なのだが、政府はこれらを「平和安全法制」という名称で「お化粧」した。
野党がこれを「戦争法案」と呼ぶと、安倍総理は、「無責任なレッテル貼り」とわざと野党を挑発する。
しかし、これは自民党側の戦略だ。どうでもいいことに議論を誘導し、本質の議論を避けようというのである。

5月27日から本格論戦が始まったが、ここでも政府は、明らかな時間稼ぎと見られる「言葉の遊び」答弁を延々と続けた。
それは、「官僚のレトリック」そのものだ。

言葉遣いの巧妙な技術によって、論点をずらし、拡散する。とりわけ都合の悪いことには絶対に触れない。相手が勝手に納得してくれればよし、納得しなければ、さらに余計な話をたくさん入れてのらりくらりと時間を稼ぎ、質問時間が終わるのを待つ。

この方法は、とりわけ、国会で圧倒的多数を占める与党側には、極めて使いやすい戦略だ。ひたすら審議時間の実績を積み重ね、最後は強行採決すれば法案は通る。本質論で国民の理解を得るなどということは、はなから考えていないのだ。

安保関連法案をめぐるそれは、まるで「官僚のレトリック」ショーだ。
総理や閣僚は、官僚が準備した想定問答を一字一句間違えないように読み上げている。インターネットで録画を見ていただきたい。

例えば、最も鋭い論客の一人である共産党の志位和夫議員の質問に対する政府側答弁。
国際平和支援として自衛隊を派遣する場合、これまでの特別措置法では現に戦闘が行われている地域はもちろん、現に戦闘が行われていなくても、自衛隊の活動期間中に戦闘行為が行われるかもしれない危険地域には自衛隊を派遣できないことになっていた。

しかし、今回恒久法を作るに当たって、活動期間中に戦闘行為があるかもしれない地域には出さないという規定をわざわざ削除した。当然、危険地域に自衛隊を派遣できるようにするためだ。
しかし、政府は、危険な地域には派遣しないことにするという答弁で押し通した。
官僚同士の議論ならこんな欺瞞は通用しない。「派遣しない」と言った途端に、「では、そう法案に書いてくれ」と言われて終わりだ。

ところが、数の力で優る安倍自民党は、論理で負けてもまったくおかまいなしだ。
もちろん、安倍自民が気にする支持率が下がれば、本格論戦に応じざるを得ないのだが、そんな心配はなさそうだ。萎縮したマスコミは権力の監視役の役割をとっくに放棄しているからである。

今後もあらゆる局面で安倍政権の「傲慢路線」が続くのであろう。そしてそのまま、論理破綻が明確になった、まったく歯止めなしの「戦争法案」が成立してしまう。
今こそ、私たち国民が、これにどう立ち向かうかが問われている。

『週刊現代』2015年6月13日号より

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