【憲法 その3】 憲法9条1項を堅持した上で、自衛隊とその役割を実態に即して明記せよ!

政府の戦後70年談話に関して議論する有識者懇談会(「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」)において元外交官の岡本行夫氏は以下のように述べた。

「日本が憲法9条の下で世界に冠たる平和国家として辿ってきた足跡は、国民として誇りに思って然るべきである。しかし、世界で最も軍事的な集積度の高いアジアにおいて、我々が軽い防衛費負担で、どこからも攻撃される心配なくやってこられたのは、憲法9条の故ではない。日米安保という防衛体制をとってきたからである」

岡本氏が言うように、東アジア地域は、兵員数で見てトップ5ヵ国のうち3ヵ国(中国、ロシア、北朝鮮)が集中しているという世界で最も軍事的な集積度の高い地域である。戦後70年間、日本の「盾」と米国の「矛」の組み合わせで日本を防衛するという日米安保体制によって極東の平和と安定を確保し得たが、この地域におけるパワーバランスは変化しており、今後も同じように平和と安定を維持できる保証はどこにもない。

岡本氏の言葉を借りれば、「国家の防衛力の水準は、その国の直面する脅威の水準を客観的に分析して、それに対応できる防衛力を持つことが本来の姿」だ。日本の場合、これまでは日米安保体制による抑止力に頼ってきたが、これからは、自らの置かれた環境に即した、現実的な安全保障政策をとらなければならず、そういった観点から憲法9条についても考えなければならない。

1. <第9条第1項> 憲法第9条第1項を維持しつつ、国際法に合致した解釈の確立を!

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」

言わずと知れた日本国憲法第9条第1項だ。

この項に関して、国連憲章など国際法との整合性を担保するために、その解釈を明確化しておく必要がある。

詳しく見ていこう。

第1次世界大戦を経験した世界では、集団安全保障とともに、戦争の違法化・非合法化の動きが進められた。それが結実したのが日本、欧州、アメリカ、ソ連なども参加した1928年のパリ不戦条約だ。ちなみに、日本国憲法第9条第1項はパリ不戦条約の翻訳であるとされる。

ここで「国際紛争解決のため、および国策遂行の手段としての戦争の放棄」が定められ、国際法における戦争の違法化が確定された。

ここで重要なことは、戦争を違法化した不戦条約においても「いかなる点においても自衛権の制限もしくは毀損を意味してはいない。自衛権は、各主権国家に固有のものである」という解釈が国際法上確立していることだ。

次に、第2次世界大戦後1945年の国連憲章によって「武力による威嚇または武力の行使」が一般的に禁止されることになった。国連憲章は、武力による威嚇又は武力の行使を禁止した上で、明文でその例外を示している。

例外は、国連憲章第51条の自衛権の行使と、第42条の安保理決議による軍事制裁の2つだ。

国連憲章第51条
「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない・・・」

国連憲章第42条
「安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる」

整理すれば、「戦争」は、国際法上一般的に「違法」とされており、「戦争」に至らない「武力の行使」や「武力による威嚇」が行われるのは、

(1)侵略目的の場合

(2)自衛権の行使の場合

(3)国際機関による制裁の場合

の3つに類型でき、このうち国際法で禁止されるのは「(1)侵略目的の場合」であるということだ。

したがって、日本国憲法9条1項の規定を堅持したうえで、憲法改正に向けた議論の中でその解釈を明確化し、国民的合意に至る必要がある。

第9条第1項の解釈
・9条1項は国際法上一般的に「違法」とされている「戦争」を全面的に放棄するものである。
・9条1項が「武力による威嚇又は武力の行使」を「国際紛争を解決する手段として」永久に放棄するとしているのは、「侵略目的の武力による威嚇又は武力の行使」のみである。自衛権の個別的又は集団的な行使の場合と国際機関による制裁の場合には、適用されない。
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