原発再稼働と“活断層” ~原子力規制委員会の“有識者”たちは本当に「有識」なのか?
石川和男

「科学的な解釈の中身に問題」 有識者会合による評価書に意見相次ぐ

私は以前から、原子力規制委員会(とその事務局である原子力規制庁)と、電力会社など原子力事業者の関係について、大きな危惧を抱いている。規制委・規制庁は規制する側、原子力事業者は規制される側。警察による犯罪取締り規制と違い、原子力関連規制は経済規制であるので、規制する側と規制される側の円滑な意思疎通が欠かせない。しかし、原子力規制を巡る現状を考えると、両者の関係が最悪だ。

その最たる例の一つが、日本原子力発電の敦賀原子力発電所をめぐるもの。敦賀原発には2基ある。敦賀1号機については今年4月27日をもって廃炉が決まり、敦賀2号機については今後本格的な議論が始まる見通し。しかし、この敦賀2号機に関しては、大きな問題が横たわっている。

5月22日付け福井新聞などで既報の通り、日本原電の濱田康男社長は、敦賀2号機の再稼働に向けた規制基準適合性審査(安全審査)に係る申請を「夏から秋ごろには行いたい」と述べたとのこと。この審査を担う規制委・規制庁は、今年3月25日の第65回原子力規制委員会において、この敦賀2号機直下の破砕帯に関して、規制委・規制庁が指名した"有識者"をメンバーとする"有識者会合"が「地盤をずらす可能性のある断層(活断層)」と結論付けた評価書を確定させた。

しかし、この評価書案を他の"専門家"がチェックした昨年12月10日の有識者会合ピアレビューでは「科学的な解釈の中身に問題がある」と修正を求める意見が相次いだ。日本原電も、活断層の可能性を一貫して否定している。規制委・規制庁は、活断層があると認めた原発であっても、再稼働に向けた安全審査の申請を拒否しない方針のようだ。規制委の田中俊一委員長は、敦賀2号機直下の破砕帯の活動性について、日本原電から安全審査の申請があれば「規制委が審査で判断する」とし、"有識者会合"の評価書は「重要知見の一つとして審査の参考にする」との意向を示している。

ではここで、敦賀2号機に関する上述の"有識者会合"による評価書を例として、規制する側と規制される側の関係について深く考察していく。日本原電は、審議の進め方や技術的な問題点に関し、次のような見解の公表や申入れを行うなど、評価書の見直しを強く求めてきた。

http://www.japc.co.jp/news/press/2014/pdf/261210.pdf (2014年12月10日/敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合ピア・レビュー会合について)
http://www.japc.co.jp/news/press/2014/pdf/270305.pdf (2014年3月5日/原子力規制庁への申し入れについて)
http://www.japc.co.jp/news/press/2014/pdf/270324.pdf (2014年3月24日/原子力規制委員会への申し入れについて)
http://www.japc.co.jp/news/other/2015/pdf/20150416.pdf (2015年4月16日/敦賀発電所の敷地内破砕帯に係る「評価書(平成27年3月25日)」の問題点について)

一方、規制委・規制庁は、昨年12月3日の第43回原子力規制委員会で、安全審査に当たっては「他のサイトと同様に、原子力規制委員会が審査を行い、許認可の可否を決定する。この際、有識者会合による評価を重要な知見の一つとして参考とする他、事業者から追加調査等による新たな知見の提出があれば、これを含めて厳正に確認を行っていく」との方針を明示した。

原発の敷地内破砕帯に係る審議は、規制委・規制庁が旧原子力安全・保安院による耐震安全性再評価(=通称「耐震バックチェック」)の積み残しを引き継いだものである。これに関しては、有識者による現地調査の結果などを踏まえ、規制委・規制庁が自ら評価することとされていた。

これは、2012年12月10日の敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合(第1回評価会合)での田中委員長による「今のままで再稼働ということでの安全審査はとてもできないなというふうに、私は印象ですけど判断しました。ただ、これは委員会で皆さんからの報告を得た上で決めたいと思いますので」との発言からも明らかである。だから、昨年12月3日に規制委・規制庁が示した方針は、従来からの方針転換だということになる。ただ、方針転換をした理由は明らかにされていない。

原発の安全性とは、それぞれの原発ごとにどの程度のリスクがあるのか、ということに他ならない。それについては当然、最新の科学的な知見に基づいて原子力規制を執り行う行政機関としての判断がなされる。その論拠こそ、昨年12月3日に規制委・規制庁が示した方針に掲げられている「重要な知見」であるはずだ。