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駆け引きはいらないストレートとフォークだけで日米の野球ファンの度肝を抜いた 海を渡ったトルネード野茂英雄を語ろう
今週のディープ・ピープル 金村義明×平野謙×神部年男

トルネードという信念を貫き通し、真っ向勝負にこだわり抜いた男・野茂英雄。日本人の「夢」を背負い、道を切り拓いたその生き様に、誰もが胸を熱くした。

衝撃のデビュー戦

平野 '90年の4月10日、われわれ西武ライオンズが対決した、野茂英雄のプロデビュー戦は今でも忘れられない。

金村 西武との初戦でしたね。監督だった仰木(彬)さんは、最大のライバル西武に、あえてルーキーの野茂をぶつけた。

神部 あの頃は西武の黄金時代で、平野君は2番ライトの不動のレギュラー。野茂はどんな印象だった?

平野 驚きました。「トルネード投法」のことは当然知っていましたが、実際に打席に入るとタイミングが非常に取りづらい。モーションが大きいというより、足を上げてから投げるまでの時間が長くて、「あれ、まだ投げないの?」という感じでした。

神部 ただ、デビュー戦はコントロールがメチャクチャでしたね。先頭打者の辻発彦をフォアボールで出し、バントした平野君もエラーで出塁。続く3番の秋山幸二にも、フォアボールを与えた。

金村 いきなり無死満塁の大ピンチですよ。しかも、そこで迎えたのが当時リーグナンバーワンの打者だった4番・清原和博でした。

平野 「平成の名勝負」と称された対決を幾度となく繰り広げた二人が、初めて相まみえた。

金村 野茂のハートに火がついたんでしょう。直球で押しまくり、最後もストレートで空振り三振を奪った。結果として6回5失点でデビュー戦は負け投手になったけど、野茂英雄の名が、全国の野球ファンに強く印象づけられた試合でした。

神部 初勝利は登板4試合目と少し時間がかかったけど、その試合にも度肝を抜かれた。21歳の新人が、1試合17奪三振という当時のNPBタイ記録をやってのけたんだからね。

金村 「ブルーサンダー打線」と恐れられたオリックスの強打者を相手に、圧巻の投球でした。打球が飛んでくる気がしませんでしたよ。

平野 勝てなかった3試合から、何か変わったのかな。

金村 3回目の登板後に仰木さんに「しっかりせぇ!」と怒鳴られたらしいです。さすがの仰木さんも、フォアボールばかりの投球に堪忍袋の緒が切れたんでしょうね。仰木さんに怒られたのは、後にも先にもそのときだけだったそうです。

神部 初勝利を上げた4月29日は、仰木さんの誕生日だったしね。何としても勝って、華を添えようと思ったんだろう。