ポール・クルーグマン 私がTPPを支持しない最大の理由~この協定は、実際には貿易に関するものではない
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実際には貿易に関するパートナーシップ協定ではない

知的正直さは、オバマ政権で十分に評価されていない長所のひとつだ。もちろん共和党の人々は、現政権のあらゆるところに欺瞞や、悪意ある隠れた動機を見出しているが、それは単なる推測に過ぎない。本当のところは、私がフォローしている政策分野に関して言えば、オバマ大統領がやっていることやその理由に関しては、驚くほど明白かつ率直だ。

ただし、それには例外分野がひとつある。国際貿易と投資だ。

提案されている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を、大統領がそれほどまでに優先順位の高い政策としている理由が私には分からない。そうは言っても、この協定に関して行うべき議論があり、良識と善意ある人々がこの取組みを支持している。

しかし良識と善意ある人々のなかには、一体何が行われているのかということに深刻な疑問を持つ者もいる。そうした質問に対し、誠意をもって答えてくれることを期待したが、残念ながらこれまで、そのような努力はまったく見られなかった。それどころか、この環太平洋地域12ヵ国間の協定の売り込み方は、言葉巧みなでっち上げ話のように聞こえる。役人たちは、潜在的な協定内容に関する主要な不安にまともに答えないで来た。批判者たちを矮小化し、まともに取り合わない。そして実際には、あとで真実ではないと判明したようなことを軽率に保証してきた。

今月初め、政府は大統領経済諮問委員会のレポートで、この貿易協定に関する主要な分析的弁護を行っている。ところが奇妙なことに、このレポートは実際には環太平洋経済協定の分析をしていない。代わりに、そこでは自由貿易を称賛しているが、それはいま問題となっていることとは無関係なことだ。

まず第一に、自由貿易の利点について何を言ったとしても、そうした利点のほとんどは、すでに実現されている。約70年前から導入されてきた過去の一連の協定により、関税その他の貿易障害は、すでに非常に低いものとなっている。そうした障害がアメリカの貿易に影響を及ぼすことあったとしても、それは貨幣価値の変動といったほかの要因によって意味がなくなるほど低い水準なのだ。

いずれにしても環太平洋経済協定は、実際には貿易に関するものではない。TPPによって、すでに低い関税がさらに低くなるかもしれない。しかし提案されている協定の主眼は、薬品の特許や映画の著作権などの知的財産権を強化すること、そして企業や国がそれに関する紛争を解決する方法を変えることにある。いずれの変更も、それがアメリカにとって望ましいことかどうかは決して自明ではない。

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