「会計基準の世界統一の流れは不可避、強制適用が筋だ」
藤沼亜起・前IFRS財団評議員。引退を機に後輩に檄を飛ばす。

右が藤沼亜起氏。IFRS財団東京サテライトオフィスにてスタッフと (筆者撮影)

日本を代表する公認会計士で国際会計士連盟(IFAC)の会長や日本公認会計士協会の会長を歴任した藤沼亜起氏(70)が、中央大学ビジネススクール教授を今年3月末で退き、現役を引退した。

昨年末には国際会計基準IFRSの策定組織を運営するIFRS財団評議員会の副議長も退任しており、日本が長年の懸案として取り組んできた会計基準の国際統一の第一線からも退いたことになる。今後のIFRSの行方や、後輩への注文を聞いた。(聞き手は経済ジャーナリスト 磯山友幸)

 採用企業は2年で4倍に

---中央大学の教授も退任され、一応現役引退ということでしょうか。

藤沼 そうですね。IFRS財団の評議員会からはアラムナイ・ネットワーク・メンバーという肩書き頂戴しました。同窓会ではありませんが、過去に評議員を務めた人たちのネットワークを整備しようというわけです。評議員には錚々たるメンバーがいましたが、退任後はすっかり疎遠になっています。今回、アラムナイメンバー第1号ということで、日本のメンバーの取りまとめを仰せつかっています。

---確かに評議員は、各国の大臣経験者など大物ぞろいでした。

藤沼 評議員会の初代議長は米国の財務長官だったポール・ボルカーさんですし、日本でも、野村証券の会長だった氏家純一さんや、富士銀行の頭取などを務めて日本政策投資銀行の社長をやっている橋本徹さんなどがいました。三井物産の副社長から日本銀行政策委員会審議委員を務めた福間年勝さんや、監査法人トーマツの会長だった田近耕次さんは亡くなりましたが。

---最近、国際会計基準IFRSを採用する企業が急速に増えています。日本ではIFRSの採用について長年議論がありましたが、ようやく流れが決まったということでしょうか。

藤沼 東京証券取引所のまとめによると、5月20日現在で85社がすでに任意適用しているか、正式発表しています。2013年6月に金融庁が「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」を公表した時点では20社でしたから、2年で4倍になったわけです。「当面の方針」ではIFRSの任意適用を拡大していく方針が明確に打ち出され、IFRSを採用できる要件を大幅に緩和しました。ただ、採用企業の時価総額を合計すると100兆円を超えたと言っていますが、これで良しというわけではありません。300社という目標もありますが、これで終わりではない。目標を500社に引き上げ、時価総額ベースで東証上場の過半数の企業が採用する状況まで早急にもっていくべきでしょう。