中野製薬 中野耕太郎社長「自由に意見を言える環境づくりや、勉強会などの成果で、ヘアワックスのヒット商品ができた。経営に偶然はない、と実感しました」

シャンプー、ヘアカラーなどを製造し、とくに美容師、スタイリストなどプロから支持を集める中野製薬。事業内容はヘアケア製品の製造・販売だが、創業者が〝化粧品であっても医薬品を作るような真摯な気持ちで製品をつくりたい〟という想いを持っていたため「製薬」の社名を持つ。社長は社員から「健康まで気遣ってくれる」と評される中野耕太郎氏(54歳)だ。

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なかの・こうたろう/'60年京都府生まれ。'83年に同志社大学経済学部を卒業し、その後、中野製薬へ入社。'89年より現職。同社が目指す好循環経営の出発点となる社員の健康増進に熱心に取り組み、'07年に全社員禁煙を達成。'09年には本社所在地である京都府の「職場で取り組む健康づくり表彰」を受賞した。※中野製薬のwebサイトはこちら

好循環経営

弊社の会議室の椅子は、バランスボール(腰掛けると体幹の筋肉を鍛えられる大きなゴムのボール)です。私が通っていたフィットネスクラブのインストラクターから「流行っている」と聞き、社内の賛同を得て取り入れました。また、10年前からは社に英語の講師を招き、志望者に英会話を学んでもらっています。これらの施策を、私は「好循環経営」と呼んでいます。

みんなが健康になり、将来も役立つスキルを得て、会社を好きになってくれれば自然と業績は上がります。業績が上がればお給料やボーナスに還元できます。するともっと会社を好きになってくれ、業績が上がる。

価値

弊社の強みは、美容師のニーズを知り尽くしていることです。美容師さんがお客様の髪をイメージ通りに仕上げられるよう、ヘアカラーは500種以上あります。シャンプーも、髪を美しく仕上げるための成分にこだわるだけでなく、1日に数十回洗髪する美容師さんを思い、手荒れしにくい成分を使っています。美容師さんも、そのお客様も、商品の価値を感じてくださっているから長くご愛用くださるのでしょう。

260分の1

私は創業者である父を13歳の時に亡くし、28歳で社長になりました。創生期から、母が食堂で社員の昼食をつくるようなチーム意識が高い企業だったためか、私も入社後、自然と「自分は(中野製薬の社員数である)260分の1の存在」と考えるようになりました。セールスをするのは私より現場の人間のほうが得意です。技術だって持っているのは担当者。私はただ、260分の1の「社長」という責務を果たすため、経営者としてチームワークを高めて、成功パターンが陳腐化しないようつとめるだけです。

人財 シンガポールへ社員旅行したときの一枚(中野氏は後列左)。海外へ羽ばたく人材を育成したいという目的もある

行けます!

思い出深いのは、'90年代の半ば、スタイリングワックスを開発した時のことです。当時「ワックス」と言えば床の掃除に使うもの、というイメージでした。しかし商品開発担当者は美容師さんと深くつながり、ニーズを把握していたのでしょう、「(まだほとんど使われていない)ワックスというものを出したい」と言うんです。会議はすったもんだしましたよ。そこで私は冗談めかして「会社員人生を賭ける覚悟はある?」と訊いたんです。すると担当は「あります! 必ず行けます!」と言うじゃないですか。

私は彼の意見に賭けました。すると美容師の間で大人気となり、商品は弊社の柱となったのです。振り返れば、以前から自由に意見が言える環境づくりをし、美容業界のニーズを知るため勉強会を開くなどしており、この提案は、それら施策が芽吹いたものだったのです。経営に偶然はないのだ、と懐かしく思い出します。