スカイマーク再建計画はまだ流動的。企業価値「180億円」の根拠を説明しない弁護士に不信感
左から有森正和スカイマーク社長、井出隆司同会長、多比羅誠弁護士、一人おいてインテグラの佐山展生氏、長峯豊之ANAHD上席執行役員。4月22日の再建計画の基本合意に関する記者会見  photo Getty Images

実質的に経営が破綻したが今週金曜日(5月29日)、東京地裁に提出される見通しだ。

本コラムを執筆している時点(5月24日、日曜日)で残されている焦点は、すでに内が定した投資ファンド「インテグラル」と全日空ホールディングス(ANAHD)以外の出資者や6人の取締役の選定だ。政策投資銀行と三井住友銀行の出資比率や、これら4社とは別のスポンサーが参加するかどうか、どこが誰を取締役として派遣するかなどがポイントという。

ただ、現在、検討されている再建計画が、東京地裁や債権者にすんなり受け入れられるかどうか流動的な面が残っている。これといった説明もないまま、弁護士による「監督委員裁定」という形で、再建の前提になる企業価値(新資本金)が180億円に設定されており、関係者がその妥当性を判断するための情報開示(ディスクロージャー)がなされていないからである。

実際に破綻しなくても、破綻が懸念される段階で手続き開始の申し立てができる、機動的で使い勝手のよい再生型倒産法を目指して、2000年に導入された民事再生手続きだが、今回の案件で制度的な不備が露呈した格好であり、大きな曲がり角を迎えたと言わざるを得ない。

「180億円」の根拠は?

事の発端は、4月16日。今回の「監督委員」をつとめる多比羅誠弁護士(ひいらぎ総合法律事務所)が関係者を集めて下した裁定が、騒ぎのタネになっている。

背景には、再生計画作りの遅れがあった。今回の案件では、スカイマークが東京地裁に民事再生手続きの開始を申し立てたのが、今年2月のこと。ところが、再建のためのつなぎ融資(DIPファイナンス)を実行した投資ファンドのインテグラルと、再建に当たって共同運航(コードシェア)による業務提携や安全運航ノウハウの提供といった役割を期待されていたANAHDが、主導権を巡って対立。4月上旬になっても再建計画作りが遅々として進まない状況に陥った。

業を煮やした多比羅監督委員は、自ら動くことを決断した。スカイマークのアドバイザーであるGCAサヴィアン任せのままでは、更生計画作りが間に合わないと判断したというのである。4月9日に設定されていた監督委員による地裁への中間報告の際に、地裁のお墨付きを得て、多比羅裁定に踏み切ることにしたらしい。

裁定の中身は、再建計画の大前提になるスカイマークの企業価値(新資本金)を180億円強とし、このうちの50.1%の90億円強をインテグラルに、残り49.9%を政策投資銀行や三井住友銀行を含むANAHDコンソーシアムに出資させる(ANAHD単独は19.9%以下)というものだ。検討のために両者に与えた時間的な猶予はわずか1日だけで、翌4月17日中に応諾するか否かの返答を迫ったという。

しかも、不可解なことに、多比羅監督委員は、企業価値を180億円強とした根拠をまったく説明しなかった。

この説明責任放棄には、2つの疑問が残った。

1つ目は、ANAHDの片野坂真哉社長が、裁定に先立つ4月9日付でGCAの高橋元マネージングディレクターらに提出した「スカイマーク株式会社の再生に向けた当社の出資に関するご提案」が黙殺された問題だ。

提案には、再建にあたって、企業価値を250億円とするほか、別途、最大で100億円の運転資金を確保とすることなどが明記されていた。円滑に再建計画を軌道にのせるため、少しでも多くの資本金や運転資金を確保して、債権者に要請することになる債権カットの金額を減らす戦略だったのである。資金が潤沢な方がよいのは自明の理と言ってよいだろう。

それにもかかわらず、あえて、ANAHDの提案を黙殺し、より少額の資本金案を持ち出した以上、多比羅監督委員自身が、その理由を説明するのが筋である。さもなければ、ANAHDも、債権者も納得できるはずがない。

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