中国
日本を蚊帳の外に、インドとの「竜象共舞」体制を狙う中国のアジア戦略
〔PHOTO〕gettyimages

先週は中国のロシア外交について述べたが、習近平主席は、カザフスタン、ロシア、ベラルーシ歴訪から5月12日に帰国するや、14日早朝には、古都・西安に向かった。インドのモディ首相を出迎えるためである。

アジアの覇権を狙う習近平主席は、できればインドとともに21世紀のアジアを率いていきたいと考えている。いわゆる「竜象共舞」(竜である中国と象であるインドが共に舞う)である。

なぜ日本ではなくインドなのかと言えば、インドはアジアの大国でありながら、中国より発展が遅れているからだ。中国人はよく、「竜は象より強いのだ」と自慢げに述べる。すると私は、「でも竜は夢想の動物でしょう」と返すことにしている。

ともあれ、習近平主席の思い描く近未来像は、アジアという雁の群れを、中国が兄貴分として先頭を牽引し、次に弟分のインドが続く。さらにこの両大国の後を、ASEANの小国群が続くというものだ。

では日本はどこにあるかと言えば、「引退した老人」として、「蚊帳の外」なのである。習近平主席としては、ウルサ型のアメリカや日本を寄せつけたくないのだ。

インドを日米から引き離したい中国の思惑

ところでインドには、3つの「顔」がある。第一に、核兵器を保有するアジアの大国としての地政学的な顔。第二に、世界第二の発展途上国としての経済的な顔。そして第三に、世界最大の民主国家としての政治的な顔である。中国としては、第一と第二を強調することによって、第三を隠してしまいたい。だが第一も、やっかいな中印国境紛争を抱えていて、なかなか順調に進まないというのが現状だ。

そこで習近平主席は、水戸黄門様のように、インドに対して3つの「印籠」を振りかざすことにした。

第一の印籠は、「一帯一路」(「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」)である。これは2013年秋に提唱していまに至る、習近平政権のアジア周辺外交のスローガンだ。

「シルクロード経済ベルト」は、中国から西方へ、陸路を通じてヨーロッパへ向かうルートを、中国が開拓するということだ。また、「21世紀海上シルクロード」は、中国から南方へ、海路を通じてヨーロッパへ向かうルートを、同様に中国が開拓することに他ならない。

このどちらのルートにおいても、カギを握るのは途中にある大国、インドなのである。だからこそ、「一帯一路」を中印で協力して開拓して行こうと呼びかける。ただし「協力して」という意味は、あくまでも「中国が兄貴分、インドが弟分として」という前提であるが。

第二の印籠は、いま話題の年末に北京に設立する「第二のADB(アジア開発銀行)」こと、AIIB(アジアインフラ投資銀行)である。5月20日から22日までシンガポールで、第5回AIIB設立準備首席代表者会議を開いた。このAIIBは、計57ヵ国が参加するが、中国がナンバー1の出資国で、インドがナンバー2の出資国となる模様だ。まさに、「兄・中国」と「弟・インド」の二人三脚によって、AIIBを運営していこうとしているのである。

第三の印籠は、BRICS(新興5ヵ国)の開発銀行である。こちらも今年年末か来年年初に、上海に設立することを、すでに決めている。5月11日には、インド最大のICICI銀行会長のK・V・カマド氏が初代総裁に、中国の祝憲・世界銀行副総裁が初代副総裁に就任することを内定している。

中国はこの「3つの印籠」を武器にして、何とかしてインドを自分のもとに引き込みたいのである。換言すれば、インドを日本やアメリカから引き離したいのである。

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