雑誌
最新経済トレンド 伊勢丹も始めた「いいひと消費」が会社を変える

廃材で作られたバッグや、環境に優しい方法で栽培された綿のTシャツ。「モノを買うことで世の中のために役立ちたい」という消費者の欲求が高まっている。倫理的な「いいひと市場」の拡大を追った。

「ゴミ」バッグに3万円!?

「こちらのバッグは、ペットボトルを原料にしたデニム素材を使用しています。廃棄されるはずだったものが、こんなふうに生まれ変わるんです」

店員の説明に、60代と思しき女性客が熱心に耳を傾けている。

「ええ!このバッグ3万円もするの?『ゴミ』から作ったのに?でもたしかにお洒落だし、地球のためになるならいいわねえ……」

説明を受けた客は、目を丸くしながらも、廃材から作られたバッグに興味津々のようだ。

ここは流行の最先端をいく品揃えで知られる新宿伊勢丹のバッグ売り場。エルメス、グッチ、プラダと錚々たる高級ブランドが軒を連ね、今日も日本人富裕層や「爆買い」に訪れた中国人の観光客でにぎわっている。

だが、その一画は少々、雰囲気が違った。5月11日から26日の期間に開催されている「グローバル・グリーン」キャンペーンのエリアだ。

この催しは伊勢丹が、「人・自然・社会」への貢献につながる要素を備えたアイテムを集めて、展示・販売するというもの。無農薬栽培を徹底して作られたコットンを使用した靴下や、発展途上国での雇用促進を図ったアクセサリーなどが売られている。三越伊勢丹ホールディングスの広報担当者が語る。

「'05年からグローバル・グリーンの催しは行ってきましたが、今年のテーマは『エシカル・ブランド』です。お客様にファッションを通じて、社会貢献に参加するチャンスがあるということをお伝えしたいと考えています」

「エシカル」とは耳慣れない言葉だが、ここ数年、流行の先端を行く人々のライフスタイルを語る上で、避けては通れないキーワードになっている。エシカルとは英語で「倫理的・道徳的」という意味。地球環境はもとより、商品の生産者や地域社会のことを「倫理的」に考えてモノを買おうという消費トレンドである。

「消費」と「倫理」。一見、相矛盾するかに思えるこの二つの要素が結びついて、新しい価値が生まれようとしている。

そもそも、おカネを払ってモノを買うという行為は、それを所有するため、自分の生活を豊かにするためのはずだった。ところが、最近のトレンドでは、おカネを払って「人や世の中のために役立ちたい」「『いいひと』として認知されたい」という動機に基づいた消費行動が生まれているのだ。

「いいひと消費」の代表例にフェアトレード商品がある。これは立場の弱い途上国の生産者の自立を促すために、公正な価格で取り引きされた原材料で作られた商品のことで、国際基準も作られている。世界におけるその市場規模は'13年度で約7115億円。ここ数年、年20%近いペースで急成長している。

ちなみに「エシカル」という概念が生まれた英国では、エシカル消費の市場規模は470億ポンド('11年度、約8・8兆円)を超えており、日本でも同市場の規模は今後ますます伸びていくと予想されている。ここに大きなビジネスチャンスが転がっているのは間違いない。

実は、すでに倫理的な商品で大成功した例は国内にもある。例えばトヨタのプリウス。これは低燃費でCO2の排出量を抑えつつ、ハイブリッド車の先駆けとして累計販売台数700万台を超えている。また、国内最軽量ボトルで石油由来樹脂の使用量を抑えた日本コカ・コーラのミネラルウォーター「い・ろ・は・す」は3年半で20億本を超える大ヒットになった。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら