ドイツ
ドイツ軍の「G36」自動小銃は弾がまっすぐ飛ばなかった!? 利権が複雑に交錯する独国防省の軍備拡張スキャンダル
〔PHOTO〕gettyimages

気温が45度に上昇すると、命中率は7%に

G36」というのは、ドイツ連邦軍が1996年より標準装備として使っている自動小銃だ。製造元は我がバーデン・ヴュルテンベルク州にあるH&K社。60年以上の歴史を誇る、世界的に有名な銃器メーカーだ。過去20年のあいだにドイツ軍はこのG36を17万6544丁購入し、現在も16万6619丁が使用されている(国防省による)。そればかりかG36は世界の津津浦浦に輸出もされていて、各国の軍隊、とくに多くの特殊部隊が使っているという。

去年、メキシコで43人もの学生が行方不明になった事件でも、拘束された容疑者が使っていた武器に、このG36が入っていたとして話題になった。G36は強化プラスチックが使われているので、3.5キロと軽いのがミソだ。ドイツは暴力組織に売ったつもりはなくても、武器は需要と供給の関係であちこちに流れていく。

ところが、今、ドイツで、これが欠陥商品だとして大問題になっている。熱くなると照準が狂うらしい。温度の高い地域で使用した場合の話ではなく、射撃による過熱でも狂うのだそうだ。しかし、このニュースを聞いてまず思うのは、なぜそれが20年のあいだ問題にならず、今ごろ急に出てきたのかということ。何だかおかしい。

ニュースを整理すると、「G36に技術上の問題がある可能性が高い」と、国防大臣ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏が発表したのが3月末。これにより、初めてこの話が国民の耳に入った。

しかし、実は、G36の新規購入はすでに去年の夏より中止され、同時に、調査も依頼されていた。その調査結果が3月に出たが、報告書は372ページに及ぶ膨大なもの。そして、そこに、G36は最高の弾薬筒を使っても、照準の精密度に問題があることが言及されていたため、国防大臣の発表となったわけだ。

ドイツ軍が、自軍の自動小銃に求めている精密度は90%。ところがG36では、気温が15度から45度に上昇すると、命中率は7%にまで落ちてしまうという。2個の弾倉(計60発)を撃ち続けたあとは、弾がまっすぐに飛ばない。つまり、敵を狙ってもまともには当たらない。だから、「このような重要な欠陥がある武器は、作戦上、限定的にしか投入できない」とのこと。

これに対して、製造元のH&K社は激しく抗議をしている。「わが社の製品は100%信頼できる」というのが同社の主張。連邦刑事局にこの件の解明を要請するとも言っている。

「そもそも、この調査は、G36を使用する状況が変わっていることを考慮していない。あたかも、独身のときにオープンカーを買って、何年も乗り回しておきながら、結婚して4人の子持ちになったあとで、役に立たないと文句を言うようなものだ!」

あまりよい喩えではないが、とても腹を立てていることだけは十分に分かる。いずれにしても、名誉棄損であるとして、法的な対抗措置も考えているらしい。

H&K社のホームページより
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