「再エネ産業」が終わる日
~『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より

自然エネルギーの分野でトップを走る国のひとつ、デンマークの風力発電〔PHOTO〕gettyimages

2030年の電源構成に関する政府案が間もなく決まる。原発比率20~22%、再生可能エネルギーは22~24%という数字ばかりが報じられるが、実は、その決定によって、日本の自然エネルギー産業発展の道がほぼ閉ざされようとしているということはほとんど報じられていない。

原子力ムラは、「2030年22%」でも野心的な案だという。しかし、'14年上半期の各国の総発電量に占める自然エネによる発電量の割合は、ドイツ30%、英国18%、スペイン50%、イタリア40%、フランス20%、デンマークは風力だけで41%だ。不安定で大量導入はできないとされる太陽光と風力だけで見ても、'13年時点でさえ主要な欧州諸国は軒並み10%超。スペイン、ポルトガルは20%、デンマークは30%を超えていた。ドイツの風力発電の容量は、'14年末に3823万kW、つまり、原発38基分だ。

ドイツは、自然エネ比率を2030年に50%、'50年には80%にする計画。英国でさえ、5年後の2020年の目標が31%だ。

こうした動きは先進国だけではない。'14年に中国で新たに導入された水力、風力および太陽光発電の容量は5200万kWにものぼる。原発52基分だ。風力だけでも1年で1400万kW、原発14基分建設されたという。もちろん、この建設のスピードは原発建設の何倍も速い。

一方、日本の2030年の計画は、太陽光と風力合計でわずか9%弱にとどまる。地熱、水力、バイオマスで最大15%程度を確保するものの、'13年度に約11%だった自然エネルギーの割合を2030年まで15年かけて、やっと2割程度まで引き上げるだけだ。これは、欧州の数年前のレベル。しかも、中国よりはるかに遅れた計画だ。

そういう試算になってしまう理由として、自然エネは「高い」から、増やすと経済に悪影響があるという前提がある。しかし、実際には、風力発電は世界中でコストが下がり、石炭火力よりも安いのが常識。自然エネ先進国では、太陽光発電も火力より安くなる国が増えている。

また、天候に左右されて不安定な太陽光と風力は5%から10%までが限界だという「神話」が日本だけには残っている。20年前に欧米で崩壊した神話をまだ信じているのだ。

では、諸外国ではなぜ、20%超の導入が普通に行われているのだろう。最大の要因は、発送電分離と小売りの自由化だ。この二つがセットで行われると、電力小売りをする企業は、とにかく一円、一銭でも安い電気を調達しようとする。その結果、既存電源にこだわらず、安い新規参入者の電気を買うのだ。不安定な電源だからと言って買い取りを「拒否」している日本の電力会社は言わば殿様商売だが、欧州の企業は、不安定でも何とかそれを使おうと必死の努力をしたから、そのための技術が急速に発達した。今や、10%が限界などと言っている日本の電力会社は、世界の笑い物だ。

いまだに発送電分離さえ実現できず、世界の先進国が最も有望な成長分野だとしてしのぎを削る自然エネ産業で一人蚊帳の外の日本。そして、それに気づかない官僚と政治家たち。日本中枢の質は、世界から見て異様なまでに劣化している。

『週刊現代』2015年5月30日号より

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