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「空のラッシュ」はこうしてさばかれている『新しい航空管制の科学』

宇宙から見守る「空の交通整理」

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全地球的航空交通システムの全貌!

GPSをはじめとする測位衛星と、インマルサットや日本の『MTSAT』などの航法衛星、あわせて100機以上の人工衛星を使って飛行ラッシュの「空の道」を管制官はどうさばいていくのか?

はじめに

 日本人の海外渡航者や外国人旅行者の増加にともなって、2020年には、1週間に日本を離発着する国内線は1万6800便、国際線は3500便に達すると見込まれています。日本と世界の航空需要は、観光庁が2020年までに観光客の倍増を目標に掲げていることからも分かるように、これからも増えていきます。

 こうした数字を知るだけでも、今日、いかに多くの空港とそれを結ぶ空の道(航空路)があり、それらを絶え間なく飛び交う航空機のあることを容易に想像できるでしょう。

 この膨大な航空交通を支える重要な業務の1つが航空管制です。頻繁に離発着し飛び交う航空機が、安全にしかも効率よく航行できるように「交通整理」する仕事です。

 かつて航空管制官だった筆者は、2003年に同じブルーバックスで『航空管制の科学』を著し、その概要を紹介させていただきました。幸いその本は版を重ねてきましたが、10年を経て、さすがに現状とはそぐわないところも見えてきています。

 もっとも変わった点は、人工衛星を使った技術が大幅に取り入れられていることです。

 今日、宇宙には国際宇宙ステーションのほか、多くの人工衛星が地球を回りながら、さまざまな仕事をこなしています。それらの宇宙技術が、はるか下、地球の対流圏や成層圏を飛ぶ航空機の航空管制にも航空の世界にも活かされています。衛星を利用して空の道を作り、衛星を利用して交通整理をする時代になっているのです。

 外国から日本に飛来する航空機が安全に秩序正しく運航できるのは、宇宙に展開している航空管制の衛星から見守られているおかげです。現在、日本発着の太平洋路線では、衛星を利用した自動管制が全便数の約半分に達しています。

 かつて四国ほどの広さに1機しか飛べなかった空に、いまやその3倍以上が航行できるようになっています。コンピュータを搭載し人工衛星を利用して航行するハイテク機が、飛行の世界に革命をもたらしたのです。

 そこで改めて、こうした最新の航空管制システムを、宇宙技術の利用を中心に紹介したいと思います。

 そのために本書では、日本からの4つの異なる路線の空の旅で、人工衛星を利用した飛行方法と航空管制システムをできるだけ詳しく、しかしなるべく平易に解説します。

 最初に第1章では島国上空を飛行する東南アジア路線を取り上げます。比較的早くから人工衛星を利用した、世界でも先進的な日本やシンガポールの管制機関を例に、管制官とパイロットの交信内容など、実際の管制場面を紹介します。

 馴染みの薄い専門用語も出てきますが、そのつどできるだけ平易に丁寧に説明するよう心がけました。また重要なものは別に章を立てて、より詳しくお話しします。