ブルーバックス前書き図書館
2015年05月20日(水)

『新しい航空管制の科学』
宇宙から見守る「空の交通整理」
園山耕司=著

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全地球的航空交通システムの全貌!

 GPSをはじめとする測位衛星と、インマルサットや日本の『MTSAT』などの航法衛星、あわせて100機以上の人工衛星を使って飛行ラッシュの「空の道」を管制官はどうさばいていくのか?


はじめに

 日本人の海外渡航者や外国人旅行者の増加にともなって、2020年には、1週間に日本を離発着する国内線は1万6800便、国際線は3500便に達すると見込まれています。日本と世界の航空需要は、観光庁が2020年までに観光客の倍増を目標に掲げていることからも分かるように、これからも増えていきます。

 こうした数字を知るだけでも、今日、いかに多くの空港とそれを結ぶ空の道(航空路)があり、それらを絶え間なく飛び交う航空機のあることを容易に想像できるでしょう。

 この膨大な航空交通を支える重要な業務の1つが航空管制です。頻繁に離発着し飛び交う航空機が、安全にしかも効率よく航行できるように「交通整理」する仕事です。

 かつて航空管制官だった筆者は、2003年に同じブルーバックスで『航空管制の科学』を著し、その概要を紹介させていただきました。幸いその本は版を重ねてきましたが、10年を経て、さすがに現状とはそぐわないところも見えてきています。

 もっとも変わった点は、人工衛星を使った技術が大幅に取り入れられていることです。

 今日、宇宙には国際宇宙ステーションのほか、多くの人工衛星が地球を回りながら、さまざまな仕事をこなしています。それらの宇宙技術が、はるか下、地球の対流圏や成層圏を飛ぶ航空機の航空管制にも航空の世界にも活かされています。衛星を利用して空の道を作り、衛星を利用して交通整理をする時代になっているのです。

 外国から日本に飛来する航空機が安全に秩序正しく運航できるのは、宇宙に展開している航空管制の衛星から見守られているおかげです。現在、日本発着の太平洋路線では、衛星を利用した自動管制が全便数の約半分に達しています。

 かつて四国ほどの広さに1機しか飛べなかった空に、いまやその3倍以上が航行できるようになっています。コンピュータを搭載し人工衛星を利用して航行するハイテク機が、飛行の世界に革命をもたらしたのです。

 そこで改めて、こうした最新の航空管制システムを、宇宙技術の利用を中心に紹介したいと思います。

 そのために本書では、日本からの4つの異なる路線の空の旅で、人工衛星を利用した飛行方法と航空管制システムをできるだけ詳しく、しかしなるべく平易に解説します。

 最初に第1章では島国上空を飛行する東南アジア路線を取り上げます。比較的早くから人工衛星を利用した、世界でも先進的な日本やシンガポールの管制機関を例に、管制官とパイロットの交信内容など、実際の管制場面を紹介します。

 馴染みの薄い専門用語も出てきますが、そのつどできるだけ平易に丁寧に説明するよう心がけました。また重要なものは別に章を立てて、より詳しくお話しします。


 第2・3章では航空管制の考え方、基準、宇宙利用のシステムなどを理解していただく章をはさみます。

 そして第4章の北太平洋路線の紹介には、太平洋上とアメリカ国内の航空管制を例に、最先端の衛星利用技術の理解をさらに深めていただく狙いがあります。陸地から遠く離れた北太平洋上の飛行には人工衛星の利用が欠かせません。

 着陸時の管制にも人工衛星は利用されています。そして、より精度の高い着陸に使われるレーダーや計器着陸装置については、空の旅の目的地のシンガポール国際空港、サンフランシスコ国際空港、そして第6章で函館空港を例に、それぞれ異なる視点から説明し、理解していただけるように配慮しました。

 さらに、日本ではまだ完全ではありませんが、高い精度・信頼性・完全性をもつ、人工衛星を利用した最新の着陸管制も見ていきたいと思います。

 第5章でこれまでの2つの路線と異なるロシア上空を横断する、ヨーロッパ路線の特徴を概観していただきます。ロシアは西欧とは異なる独自の管制基準をもっています。また多くの国々がモザイクのように国境を接しているヨーロッパでは、より複雑なシステムになっています。

 最後の第6章では日本国内路線を紹介します。電離層の影響など、日本の実情に合ったレーダー監視のもとでの衛星の利用方法を理解していただけると思います。

 また近年、人工衛星の利用が進んでいる有視界飛行についても触れておきます。

 読み進んで、衛星利用の航空管制の現状を知っていただくにつれて、それぞれの航空管制の特徴や違いなどがお分かりになっていくと思います。

 次に飛行機に搭乗されるとき、本書で得た知識によって、その大空の旅がより楽しいものになれば幸いです。

 

著者 園山耕司(そのやま・こうじ) 
一九三五年生まれ。元航空管制官。航行支援アナリスト。防衛大学校応用物理科卒業。アメリカ空軍で航空管制を学んだのち、航空自衛隊で実務と航空行政の双方に携わる。一九七一年、日本の航空史上最大級の事故であった雫石上空での空中衝突事故の対策立案のため、二年間にわたって欧米四ヵ国の実情調査に参加。航空自衛隊保安管制気象団防衛部長などを経て一九九〇年退官。二〇〇六年、瑞宝小綬章受章。著書に『航空管制の科学』(講談社ブルーバックス)、『図解 座標科学でわかる航空管制』(秀和システム:第39回交通図書賞受賞)、『航空管制官はこんな仕事をしている』(交通新聞社:政府刊行物指定)他がある。
『 新しい航空管制の科学 』
宇宙から見守る「空の交通整理」

園山耕司=著

発行年月日: 2015/05/20
ページ数: 256
シリーズ通巻番号: B1916

定価:本体  940円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

 


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