企業・経営

孫正義ソフトバンク社長「ネット起業投資」「後継者指名」宣言で隠した苦境とは

グーグルからスカウトしたインド人後継者は話題となったが・・・       photo Getty Images

創業から33年、57歳に達して、髪の生え際が後退し白髪も混じるようになったが、今なお、ソフトバンクの孫正義社長の弁舌は健在だ。先週月曜日(5月11日)に開いた決算説明会では、海外のインターネット関連企業向けの投資に軸足を移して「世界のソフトバンク」に脱皮すると大きな夢を開陳した。

しかし、その言葉の裏側で、業績に変調の兆しがみえる。特殊要因があったとはいえ、2015年3月期は本業の儲けを示す営業利益が前の期に比べて8.8%減の減益決算に終わった。また、今期について、孫社長は「投資や事業の売却が繁雑に起こると想定され、業績予想を伝えるのは適さない」と見通しを示さなかったが、大幅な最終減益が避けられない模様なのだ。

手広く営むビジネスの中でかく乱要因になっているのは、米モバイル業界3位のスプリントだ。同4位のTモバイルUSを吸収合併して市場を寡占化し、戦い易い体制を整えようと目論んでいたが、米政府に待ったをかけられて失敗。今や重いお荷物になっている。かつての孫社長ならば、すかさずスプリントを売却してとっくに撤退したはずだ。

決算発表の席では、余裕たっぷりに後継者候補を指名して話題を振りまいたものの、行動力が衰えた印象もある。稀代の起業家・孫正義に、抗いがたい老いが忍び寄っているのだろうか。

孫社長の主張を鵜呑みにしてよいのか

「創業から30数年経ったが、今までは日本のソフトバンクが海外投資をしていた。これからは第2のソフトバンク。世界のソフトバンクが日本でも事業を展開している、そういう風にやりたい」――。

孫社長は、話題を集めた2015年3月期の決算発表の冒頭で、こう語った。

足元の業績をグループ全体(連結決算)でみると、売上高や償却前の営業利益(EBITDA)が拡大基調を維持していると強調。8.8%減となった営業利益にも触れて、その前の期にガンホーとウィルコムを子会社化したことに伴う一時的な増益要因があったために減益に映るが、そうした影響を除けば、実態として増益基調を維持していると主張した。

次いで、ソフトバンクグループの収益状況を通信とインターネットの2分野に分けて詳しく解説。通信では、国内のモバイル事業がボーダフォン・ジャパンの買収から9年で9倍の営業利益を確保したほか、スプリントの優良顧客の解約率が低下しており「明るい兆しが出てきた」と述べた。

また、インターネット分野では、中国の電子商取引大手アリババの規模が米国の小売最大手であるウォルマートに迫り、インドやインドネシアでは出資先企業の業績が好調だと説明した。

しかし、孫社長の主張を鵜呑みにするのは難しい。根拠を一つあげるなら、「一時的な変動益」という点である。

こうした議論をするのならば、営業利益だけではなく、前期比で38.2%の増益となった税引き前利益や、同32.1%増益となった最終利益にも、きっちりスポットを充てるべきだ。

というのは、2015年3月期は、アリババ株のニューヨーク上場に伴う評価益などが約6000億円出て、税引き前利益や最終利益を押し上げたからだ。

表面的には好調に見える2015年3月期決算の税引き前利益や最終利益こそ、一時的な変動益に支えられたラッキーの賜物と言わざるを得ないのである。孫社長のような良い処どりは許されない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら