[日本航空]
更生手続き終わり「株式会社」に復帰

震災による旅客減、燃料高騰・・・逆風の中
「再生の証し」と位置付けられた「鶴丸」が描かれた日航機と記念撮影に納まる大西賢社長(右から2人目)=羽田空港で2月28日

 経営再建中の日本航空は3月、東京地裁から会社更生手続き終結の認可を受け、1年2カ月ぶりに経営の自由度が高い「株式会社」に復帰した。需要回復や円高効果で、11年3月期の営業利益は、当初目標の3倍近い過去最高の1700億円程度を見込む。

「奇跡的」(日航首脳)ともいわれる再建を進めてきたが、東日本大震災による旅客急減や、中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰などの逆風が吹き荒れる中、裁判所の管理下を離れることになった。自力で12年度内の再上場を計画通り果たすには、経営戦略の更なる立て直しが必至の情勢だ。

 「陸路が復旧していない中、空路の確保は我々の使命。持てる生産資源の多くを東北に割きたい」

 津波で水没した仙台空港の民間機運用が再開された4月13日、日航の大西賢社長は羽田空港で、ほぼ満席になった仙台行きの臨時便1番機を見送った。

 日航は震災直後から、収益の柱だった羽田~福岡線などの国内幹線を欠航。空いた機材やスタッフを使って、震災発生翌日の12日から青森や花巻、山形空港に臨時便を飛ばし始めた。3月の臨時便の運航実績は、ライバル全日本空輸を大幅に上回った。

「社会に存在意義を示さないといけないという現場の危機感が、素早い臨時便就航につながった。破綻前の会社だったら、ここまで飛ばせなかった」。日航の運航本部を担当する社員は振り返る。

「株主や金融機関をはじめ、社会の皆様にご迷惑をかけ、心よりおわびしたい」。昨年1月の経営破綻以降、経営陣からはこのような発言が繰り返されてきた。新経営陣は1年2カ月の間、整理解雇者を含む1万6000人の人員を削減。

 地方都市間を結ぶ国内線や、イタリア・ミラノ線など旅客数の季節変動が大きい国際線を中心に、路線数を2割縮小した。燃費効率の悪いジャンボ機も退役させ、運航コスト削減に努めてきた。

 一方で昨年12月には、官民ファンドの企業再生支援機構から3500億円の出資を得た。更生手続きの終結に当たっては、破綻時の借金返済のために、金融機関から2550億円の新規融資を受けた。終結にようやくメドがついたころに東日本大震災が発生した。臨時便の就航は「再生の機会を与えてくれた国民や、迷惑を掛けた関係者への恩返し」(日航社員)との強い気持ちが芽生え、現場は使命感で満ちあふれている。

 だが、大震災の発生とその後の福島第1原発事故の影響により、旅客需要は急速に落ち込んでいる。観光庁は3月の訪日外国人旅行者数が前年同月比50・3%減の35万2800人になったと発表。成田空港の外国人入国者数は震災後3週間で7割減少した。

 大西社長は3月28日の会見で「地震発生後から国内旅客が28%、国際が25%減。今後も楽観視できない」と説明。厳しい環境での再出発について、稲盛和夫会長は「11年度は相当下振れする。路線別採算制度でリスクに耐える経営を目指す」と決意を語った。日航はこの日早速、国際線11路線での減便や、機材の小型化を決めたが、原発事故の解決が長期化し赤字が出れば、今でも決して十分とはいえない資本が不足する可能性も出てきている。

 中東情勢の緊迫化による航空燃料の高騰も、収支に直結する。日系2社は、4~5月分の国際線の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を値上げしたが、6~7月分もさらに値上げとなるため、旅客減に一層拍車がかかるのは必至だ。

 日航は現在、11年度以降の経営計画の見直しに着手している。昨年8月末に東京地裁に提出した更生計画では、12年3月期の連結営業利益は757億円。大震災前は「少なくとも1500億円は固い」(日航幹部)と上方修正する公算が高まっていたが、環境は一変した。

 しかし社内では、「赤字路線はすでに削減済みで、外部リスクに強い体制になりつつある」「いくら悲観的なシナリオを織り込んでも、757億円を下回る可能性はない」などと下方修正に否定的な声が大勢を占める。

 こうした動きに、金融機関は「今後の融資対応について、経営内容を常に確認して判断する必要がある」(大手行幹部)と慎重な姿勢を崩さない。

格安航空会社との競争激化

 格安航空会社(LCC)の相次ぐ日本進出も、日航にとって脅威となりそうだ。全日空は香港の投資会社と組んで、関西空港を拠点のLCCを設立。12年3月に福岡、札幌線、同5月には韓国・ソウルへの就航を計画している。

 一方で日航は「価格競争ではなく、高級感のある航空会社として存続する」(稲盛会長)とする一方、社内にはLCC参入を模索する動きもあり、競争に勝てるかは不透明だ。

 国が進める航空自由化の進展は、航空会社にさらなる変化を迫っている。日航は4月から、同じ国際航空連合のワンワールドに加盟するアメリカン航空と、全日空はスターアライアンスに加盟するユナイテッド航空など2社と共同事業を本格化している。国際線は従来の「個人戦」から、航空連合による「団体戦」への対応力が問われ始めた。

 全日空は欧州航空大手ルフトハンザドイツ航空との共同事業をにらみ、2月下旬、日欧路線での独占禁止法の適用除外(ATI)を国土交通省に申請した。一方で日航には目立った動きはなく、「全日空に比べ、将来戦略の具体化が遅れている」(国交省幹部)という。

 専門家からは「稲盛流はコスト削減ばかりで、上場を目指すうえでの魅力的な拡大戦略が見えない」との意見も相次いでいる。震災リスクにさらされるなか、尾翼に「鶴丸」のロゴを復活させた日航機のかじ取りは、引き続き難航しそうだ。

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