日本クラフトビール代表取締役・山田司朗「和食に合う日本の『ビール文化』を創って、世界中に広げていきたい」
オックスブリッジの卒業生は、いま

シリーズ「オックスブリッジの卒業生は、いま」では、オックスブリッジの卒業生はじめ、両大学に縁のある方々のインタビューを掲載していきます。オックスブリッジでの経験が自身の生き方やキャリアにどう影響を与えたかなど、様々な切り口でお話を伺っていきます。

第1回目は、ケンブリッジでMBAを取得した山田司朗さんの登場です。現在は、日本クラフトビール株式会社を創業し、日本発のオリジナリティあふれる美味しいビールを世界に展開しています。ケンブリッジMBAでの経験や学びがどのように現在の活躍につながっているのか、などについてお聞きしました。

山田司郎さん:ケンブリッジ大学MBA卒業後、日本クラフトビールを創業、代表取締役を務める。

MBA留学先としてケンブリッジを選んだ理由

―まずは、英国ケンブリッジに留学されたきっかけを教えてください。

学生時代から大学院留学を考えていたこともありますが、前職のベンチャーキャピタルやIT企業で投資、経営企画やM&A等の業務で多くのMBAホルダーに関わる機会があり、海外のMBA留学に関心を持ったのがそもそものきっかけです。当時は取締役など責任のあるポジションも経験させてもらい仕事も充実していたのですが、日本企業独特のビジネスのやり方しか知らないまま30代を迎えることに対する危機感がありました。世界中から優秀な人材が集まるMBA留学にはちょうどよいタイミングだと思ったのが経緯です。

もともと多様性(ダイバーシティ)を体験したいと考えており、米国から2割、欧州から4割、アジアから3割…といった「本当のインターナショナルな環境」での経験が得られる欧州MBAを狙っていました。その中でも、ケンブリッジは起業文化が強く、当時の英国のベンチャー投資の約2割がケンブリッジ周辺のスタートアップに集中していることを知りました。前職はITのスタートアップ企業におり起業には興味があったため、ケンブリッジの起業文化には魅力を感じました。

また、実際に学校訪問をしてみると、他校とは異なり伝統的な建物が立ち並ぶ歴史のある雰囲気の街で、都市型のプログラムでは得られない特別な経験が得られると思いました。

起業につながる、ケンブリッジでの経験と気付き

―実際にケンブリッジでMBAの1年間を過ごされたわけですが、一言で言うとどんな1年でしたか。

留学は10年以上も前なので忘れていることも多いですが(笑)、人生で一番楽しかった1年だと思っています。当然大変なこともたくさんありましたが、それまでの人生では得られない様々な貴重な経験ができた、あっという間の1年でした。私は英語が得意ではなかったのでプログラム当初は苦労したこともあります。留学前のGMATやTOEFLの英語勉強だけでは、現地でのリアルなディスカッションなどには歯が立たないことも痛感しました。

入学して最初の学期では、様々な国や業界出身の、ほぼ初対面の仲間とグループで課題に取り組みます。グループ内の役割分担では、私は得意なエクセルワークの担当を勝ち取るのに必死でしたね(笑)。出身業界も異なりこれまでの経験・仕事の進め方も全く違うメンバー同士での意見をまとめなくてはいけないので、1人ひとりの得意分野・不得意分野をうまく組み合せて、さらにその中で自分がどう貢献できるかを考えるよい経験になりました。いくら口が達者で偉そうな人でも万能選手ではないと、フラットな視点を持つことが重要だと感じました。

―全く新しい環境・バックグラウンドの異なる人たちの中で自分がどう貢献していけるか、というサバイバル的な考え方は重要ですよね。MBAプログラムの中で特に印象に残った授業や経験はありますか。

多くの有名な起業家と会う機会があったことです。MBAの授業やケンブリッジ大学全体のイベント等では起業家を呼んで話を聞く機会が頻繁にあり、例えばEasyJet(英国拠点のLCCの草分け的企業)の創業者など、いろんな起業家がゲストとして来ていましたね。

ストラテジーの授業では、ケースセッション(過去の実例を使ったディスカッションの授業)があり、そこで英国発のインド料理向けのビールブランド「コブラビール」についてのクラスがありました。コブラビールの創業者カラン・ビリモリア氏は、もともとは会計士でビールとは全く関係ない業界の人ですが、ある日ロンドンのインド料理レストランでカレーと一緒に飲んだカールスバーグ(デンマーク産のビール)があまりに料理に合わないため、「自分でインド料理に合う美味しいビールを創ってやる!」と決意して会社を立ち上げたそうです。このクラスでは学生が実例についてディスカッションした直後に、起業家本人が教室の後ろから登場してスピーチをするのですが、コブラビール創業者との出会いもその後の私の決断に大きな影響を与えたと思っています。

留学当時の体験談から現在の事業展開での様々なチャレンジについてお話いただいた。