「増税先送り」「賃金増」のまやかし
『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より

アベノミクスで庶民の暮らしが良くなる。アベノミクスで税収が増える。財政再建もできて、消費税増税は10%で打ち止めだ。そんな夢を語る安倍晋三総理。しかし、そのシナリオの矛盾が拡大していることを大手マスコミは伝えない。

5月4日の日経新聞は、政府の「財政健全化計画の基本方針」を報じた。実質2%以上という高い経済成長率を見込み、その高成長の結果、税収増が7兆円となり、歳出削減などで穴埋めする必要がある赤字は9・4兆円まで縮小するという内容だが、実質1%未満とされる日本の潜在成長率(経済の実力)の2倍を見込む極端な楽観論である。

アベノミクスでは、円安と公共事業の大盤振る舞い以外に景気浮揚策がない。今国会も「改革断行国会」と名付けたのに、何も出てこない状況だ。しかも、円安と公共事業バラマキはすでに限界。結局、最後は目論見が外れたということで、消費税を10%から15%、さらには20%へと引き上げるしかなくなる可能性が高い。そこで重要なのは、今回の健全化計画に盛り込まれるという、「'18年の計画見直し」という文言だ。

そこには、財務省とも結託したしたたかな計算がある。来年の参議院選挙では、消費税を10%以上には上げませんという公約を掲げる。衆議院選挙(同日選もありうるが、それより遅くなった場合でも)を遅くとも'17年ないし'18年の早めに実施すれば、計画見直し前だから10%超の増税はないという嘘を掲げて戦える。選挙で勝てば、それからすぐに再増税の議論に入るというシナリオだろう。

現に安倍総理は、'17年の消費税の10%への引き上げ後の消費増税はないと言っている。しかし、実際は、今から堂々たる「嘘」の準備を仕込んだ健全化計画を作っているということだ。

しかし、嘘は嘘を呼ぶというのが世の定め。

次なる嘘は、アベノミクス成功の最大のカギとなる賃金上昇に関するものだ。

これまで、安倍総理は経団連の統計などを引用して、ことあるごとに賃金が上がり始めたと強調してきた。そのシナリオはこうだ。

5月1日に発表された厚労省の統計では、'15年3月の実質賃金指数(物価上昇分を差し引いた実質的な賃金の水準)は前年比マイナス2・6%だった。4月になると、消費増税から1年が経って、その影響(約2%)がなくなるため、この指数は近いうちに前年比でプラスになる可能性が高い。

これをもって、安倍総理は、「実質賃金が増えた!」とはしゃぎ、マスコミにもそれをそのまま垂れ流させる計画のようだ。

しかし、騙されてはいけない。

この数字はあくまで'14年4月との比較だ。安倍政権誕生直後の2年前と比べなければアベノミクスの成果はわからない。実は、'13年3月に比べると今年3月の実質賃金は、約4%のマイナスと見られ、消費増税の影響を除いてもマイナス2%程度と国民生活は大幅に悪化している。

6月2日に予定される今年4月の賃金統計の発表。その数字をどうマスコミが報じるのか。今から疑いの目を向けておかないと、また大本営発表に市民が騙されることになりかねない。

『週刊現代』2015年5月23日号より

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