日米防衛ガイドラインと安保法制で日本が変わる、「変わってしまう」
古賀茂明「改革はするが戦争はしない」フォーラム4 Vol.003より
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米国からの独立を意味する「安保法制反対」

昨年7月の集団的自衛権の行使を容認する閣議決定で憲法9条を解釈で実質的に改正してしまった安倍政権だが、その実現のためには、国会で関連の法律を成立させなければならない。従って、昨年の段階では、まだ、日本には後戻りする選択肢があり得た。

しかし、4月に安保法制に関する主要条文などについて自公両党が合意し、日米間で日米防衛ガイドラインの改訂が成立し、それを安倍・オバマ会談でさらに世界に向けてアピールしてしまった今、この路線を捨てて、以前と同様の現行憲法9条を中心とした平和主義の道に戻ることは極めて難しくなった。

もちろん、それは「難しくなった」だけで、不可能になったわけではない。しかし、国会で法案を否決するのは、自公両党で衆参とも十分過半数を制している状況から見てほとんどありえないことだ。

もちろん、国民世論が予想外に反対に傾き、国会前に何万人もの群集が連日押し寄せるというような事態になれば、ある程度の効果は期待できるだろう。それでも、安倍政権は諦めることはない。成立が多少遅れても、デモは何ヵ月も続くことはないと読み切って、それが下火になってきたのを見計らって強行採決をするに決まっている。

そうなると、平和主義に戻るためには、まず、来年の参議院選挙で自民党の議席を大幅に減らすことが必要だ。さらに続く(場合によっては参議院選と同日に行われる)衆議院選でも自民党政権が倒れる結果を出さなければならない。

さらに、その後にできる政権が、単に集団的自衛権に反対というだけでは心もとない。何故なら、安保法制を元に戻す法案を通すだけではすまないからだ。

何よりも難しいのが、米国にガイドライン改訂を求めることが必要になる。しかし、これは、国際的に見れば、条約ではないものの、二国間の正式な合意だから、米国の反発は相当大きなものになるだろう。場合によっては、日米安保体制の基礎となる両国間の信頼関係を損なう怖れも十分にあり得る。それを覚悟で米国と交渉する勇気のある総理が出てくるのかということだ。

ただ、すぐに改訂できなくても、事実上執行を止めてしまうという手もある。米国からガイドラインに基づく協力要請が来た時に、とりあえず、何だかんだと理由をつけてこれを事実上拒否するのである。それと平行して、ガイドライン改訂の交渉を粘り強くするということになる。米国は相当にイライラするだろうし、様々な脅しをかけてくるだろう。それでも交渉を続ける道を選ぶのかどうかが問われてくる。

そう考えると、実は、これから平和主義に戻る道は、真の意味で米国から独立して行く道でもあるということがわかってくる。今まであやふやにしていた、米国との関係を一度真剣に考え直して、決して米国と「対立」するのではなく、「対等」な独立国同士としての関係構築に向かう。そういう一見かなり困難そうな道だ。

しかし、私は、「その道を選ばなければならない」と思う。

今回の一連の安倍政権の日本の外交・安全保障政策の根本的転換に反対するということは、そういう意味があるということを自覚して、野党も私たちも安保関連法案に反対していかなければならない。

民主党と維新の党~どちらも当てにしてはいけない

民主党は、集団的自衛権についての態度をいまだに決めかねている。

民主党には前原誠司元代表をはじめ、タカ派の議員がたくさんいる。しかし、ハト派といわれる人たちの間でも、鳩山由紀夫総理(当時)が普天間基地の移設問題で「最低でも県外」と言って、大混乱に陥ったトラウマから、政権交代を目指すのなら、政権についた時にあまり重い課題を背負うべきではないという考え方をする人も多いらしい。
もちろん、明確な反対論を展開する勢力も少なからずいる。

従って、これまでも議論するたびに紛糾し、答えを出そうとすると党が分裂しかねないということで、常に玉虫色で決着してきた。現在続いているこの問題に関する調査会の議論でも、同様の決着となる怖れが強い。例えば、23日に示された妥協案には、朝日新聞によれば、「政府の新3要件に基づく集団的自衛権の行使は容認しない」という表現が書かれていたが、これでは、新3要件とは異なる条件のもとで行使を容認するという意味になりかねないので、翌日の案ではペンディング(保留)となってしまったそうだ。

もちろん、今国会では、解釈改憲への手続き論での批判や新3要件の曖昧さなどを批判して反対と叫ぶだろうが、私は、岡田代表自身、集団的自衛権そのものには反対していないと見ている。これまでの発言の言葉の端々にそうしたニュアンスが見て取れるからである。官僚の私から見れば、むしろ、それは明白であると言っても良いくらいだ。元官僚である岡田氏は、その点も十分にわかった上で発言しているはずである。

ということは、仮に来年以降、民主党が政権についても、これまでの真の平和主義に戻ることを期待するのは相当に難しいと思っておいたほうが良いということになる。そもそも、こんなに重要な問題に党として決着をつけられなければ、国会で論戦を挑むことすらできないかもしれない。安倍総理が民主党議員の足並みの乱れをついて、国会で嘲笑うというような光景が見られるかもしれない。そんな心配すらある。

一方の維新はどうか。こちらは、元々はタカ派議員が多かったのだが、一年生議員などにはリベラルな議員もいる。元結いの党の江田憲司代表や小野次郎参議院議員などは元々リベラルだが、江田氏の最近の言動を見ていると、橋下氏率いる大阪維新系の力に引っ張られている感が強い。

そこで、日本の安保法制の行方を占う上で、極めて重要になっているのが、大阪都構想をめぐる住民投票だ。5月17日の投票で、もし、橋下市長側が推進する大阪都構想が否決されたら、橋下氏は政治家引退も示唆しているほどで、その影響力が大きく落ちることは必至だ。そうなると、江田氏の影響力が強まり、リベラル派の巻き返しが起きるかもしれない。

他方、都構想が承認されれば、橋下氏の力は復活し、来年の参議院選出馬も含めて維新の党の中での橋下氏の力が強まる。その結果、安倍政権との協力姿勢もさらに鮮明になり、安保法制を止める勢力にはならないと見たほうがいいだろう。
一地方の住民投票が、実は、日本の平和主義外交に大きな影響を与えるということを大阪の人々は理解しているのだろうか。・・・(以下略)

古賀茂明「改革はするが戦争はしない」フォーラム4(2015年5月8日配信)より

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