「一番大切なのは今、これでいいのかどうか」---虎屋 代表取締役社長・黒川光博氏に訊く、老舗のこだわり
渡辺新『銀座・資本論』より

第2章 大切なのは「今」

虎屋 十七代当主 代表取締役社長 黒川光博
くろかわ・みつひろ / 1943年東京生まれ。学習院大学法学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)勤務を経て1969年株式会社虎屋入社、1991年代表取締役社長に就任。全国和菓子協会会長、全日本菓子協会副会長、一般社団法人日本専門店協会顧問等を務める。

【第1章】はこちらをご覧ください。

最後は「人間の目」がものをいう

黒川 よく和菓子の定義について聞かれることがありますが、私は植物性の原材料で作られているものだとひとつの定義づけをしています。動物性の油や肉、またゼラチンなどを一切使っていないわけです。

ひとつ挙げるとすれば焼き物には卵が入りますが、それ以外はすべて植物性というのが和菓子の定義だと思っていますし、今後もその定義は貫いていこうと思っています。植物性というのは健康の観点からしても、今求められていると思います。健康は大切なことなので、原材料も添加物を加えずできるだけシンプルにし、天然のものを使用したいと思っています。

私は、国産、海外産どちらかにこだわってはいないつもりですが、それぞれの商品を作るのに最適なものは何かという基準で選ぶと、今のところ我々の商品を作るうえにおいては、やはり国産もののほうが合っています。

渡辺 仕入れ先とは、ものすごく長いお付き合いなのですか。

黒川 ええ。史料が残っておらずはっきりわからないのですが、古いところでは江戸時代からのお付き合いになるようです。

渡辺 原料メーカーの方とは、かなりお話をされるのですか。

黒川 はい。黒砂糖は沖縄の西表島のものを使っているのですが、毎年1回、向こうの方が来られたりこちらから伺ったりして、いろいろな話をします。

天然のものを使用するからには、安全性をいかに確保するかが重要です。もちろん放射性物質の検査などは厳しくやっていますし、原材料を作ってくださるところがどういう農薬を使っているかなどの証明書をもらえなかったら、材料として入れられないというとらやの基準もあります。それは一般の基準より少し厳しいと思います。

また、天然のものは天候によるばらつきがありますが、そのばらつきがあるものを製品として召し上がっていただくときにいかに標準化し、自然から採れる原材料の違いをどのように基準化し、菓子作りをしていくかというのはなかなか大変です。

渡辺 許されるブレというのはあるんですか。

黒川 我々の中で決めている多少の範囲はあります。
 

銀座・資本論』
著者= 渡辺 新
講談社+α新書 / 定価907円(税込み)

◎内容紹介◎

マルクスもピケティも銀座の商いを知らない。「ていねいでこまめで濃い商い」こそ、これからの時代を生き抜く武器になる!
いま「銀座」にグローバルの風が吹き荒れている。外国人観光客であふれる日本一有名な商いの街「銀座」の商人たちは、過去から何を学び、現在をどう解釈し、未来に何を企てるのか。老舗テーラー、壹番館洋服店の主人・渡辺新は、銀座の商人たち10人と語り合い、銀座ならではの、ていねいでこまめな商いのかたちを日々模索する。21世紀の幸福な商いとは?

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