辻村深月×鈴木大介対談 「親と社会に捨てられ、生き延びるために犯罪を犯す若者たちの『素顔』」

『ギャングース・ファイル 家のない少年たち』
刊行記念対談
辻村深月×鈴木大介「私たちは誰のために、書くのか」

写真左・鈴木大介さん/右・辻村深月さん

日本の最貧困層を取材し続け、『最貧困女子』や『老人喰い』を書いた鈴木大介。
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』で地方で生きる女性の姿を書いた、辻村深月。
彼らの作品は、彼らが描こうとしている人々には届かない。
ふたりは何のために、誰のために書いているのか。

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辻村鈴木さんの大ファンなので、今日はお会いできてとても嬉しいです!

鈴木ありがとうございます。今、辻村さんの『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(以下『ゼロハチ』)を読み終えた直後です。すごく動揺していて、ちゃんと喋れるかどうか。あえて読了直後の感覚で臨もうと思ったのですが、大失敗でした。とてつもない作品です・・・・・・。

『ギャングース・ファイル』との出会い

肥谷圭介×鈴木大介『ギャングース』第1話を公開中! 生まれた時から親に虐待され続け、ろくに学校も行けずに青春期を少年院で過ごしたカズキ・サイケ・タケオの3人は、生き抜くために犯罪者だけをターゲットにした“タタキ”稼業を開始した! 3人の“生”への挑戦が今、始まる!!! 最大限に実話を基にした“超実証主義”漫画。
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辻村 私が鈴木さんを知ったのは、『ギャングース・ファイル』(原題『家のない少年たち』太田出版刊)が原案の漫画、『ギャングース』(「モーニング」連載中)がきっかけです。ルポルタージュの漫画化は珍しいことだと思うのですが、どういった経緯で実現したのでしょうか。

鈴木 『ギャングース・ファイル』の単行本を読んだ編集者の関根さんから、漫画にしたいと熱烈なアプローチをいただいたことがきっかけです。

ちょうど、自分の書いてるものが誰に伝わっているのか、悩んでいた時期でした。僕がこれまで書いてきた書籍の読者のほとんどは子供や女性の貧困に興味がある人たちでした。でも興味がない人にこそ、この問題に目を向けてもらいたいし、そうする必要があると思っていました。オファーをいただいて、漫画というパッケージなら手に取ってもらえるんじゃないかと思い、漫画家の肥谷圭介さんと組むことにしたんです。辻村さんが『ギャングース』を読まれた理由はなんだったんですか?

辻村 もともと「モーニング」愛読者なんです。子供のころから、書店の袋に書いてあった「読むと元気になる!」という「モーニング」のキャッチコピーを知っていて、いい言葉だなと思っていました。ただ、一緒に『ああ播磨灘』の主人公も印刷されていたので、しばらくは、雑誌じゃなくて作品のキャッチコピーだと勘違いしてたんですが(笑)。

ここ数年は、毎週「モーニング」をとても楽しみにしていて、新連載も欠かさず読んでいます。だから『ギャングース』も、新連載が始まったな、と思って、最初は何の気なしに読んだんです。

感想を一言で言うと、グッときました。読んでいる間中、ずっとなにかに圧されているような感覚がありました。それと、欄外にある注釈「すずきメモ」も抜群に面白かった。この人、いったい何者だ!? と思い、著作に手を伸ばしたんです。

鈴木 「すずきメモ」は関根さんの提案なんです。僕は、漫画に現実の情報という不純物が入るのはどうかと思ったんですが、結果としてはあってよかったですね。

家がないということ。貧困ということ

辻村 文庫解説にも書きましたが、正直、最初は鈴木さんの著作を読むのが怖かったんです。この熱い漫画の原案が、事例を単純に分析していくだけの、冷たい視線のノンフィクションだったらどうしようと。でも、最近読んだどんな小説よりも面白い物語が広がっていた。少年たちが言葉にできない部分も、鈴木さんがサポートして描かれている。鈴木さんが書かれた少年たちの物語は、圧倒的に新しくて、優しいルポでした。

中で、少年たちの性格を「自堕落なくせにものすごく勤勉で」と書かれていましたよね。