内藤愼介プロデューサーに訊く、NHK木曜時代劇『かぶき者 慶次』の魅力
NHK『かぶき者慶次』公式HPより

民放から時代劇が消えた

武士道は世界に誇れる日本固有の思想の一つだろう。相互扶助の精神を説いた「武士は相身互い」、清貧の美徳などを表した「武士は食わねど高楊枝」、信義と約束の大切さなどを意味する「武士に二言はない」――。今も日本人の底流にある考え方であるはずだ。

武士道が色濃く織り込まれたテレビ番組は言うまでもなく時代劇だ。ところが、民放の時代劇のレギュラー放送枠は跡形もなく消えてしまった。まるで、武士道と相反する弱い者イジメや拝金主義が世間で幅を利かせ始めたのと軌を一にするかのように。時代劇もまた世界に誇れる文化なのだから、もったいない話だと思う。

民放は過去には数々の優れた時代劇を制作している。記憶に新しい代表例は『鬼平犯科帳』(フジテレビ版、中村吉右衛門主演、1989年~)と『剣客商売』(同、藤田まこと主演、1998年~)だろう。ともに原作は故・池波正太郎氏の小説で、それに基づいた脚本は珠玉というほかない。人情の機微が随所に織り込まれている。日本人の原型が描かれていた気がする。現代劇には出来ない芸当だろう。

両作品は出演陣も豪華で演技巧者ばかり。美術や音楽なども凝りに凝っていた。『鬼平犯科帳』の場合、エンディング曲にジプシー・キングスの「インスピレーション」を選んだ制作者のセンスに脱帽するほかない。ナレーターに元NHKの無頼派アナ・中西龍氏を起用したのにも唸った。両作品を見れば、時代劇が苦手な人も考え方が変わるに違いない。

侍の世界に拘り続けるNHK「木曜時代劇」

一方で視聴率獲得が第一目的ではないNHKは、もちろん今もレギュラー放送枠を守り続けている。大河ドラマは近代の明治期も描くが、侍の世界に拘り続けているのが「木曜時代劇」(午後9時)だ。

「木曜時代劇」は髙田郁氏原作の『銀二貫』(2014年)や佐伯泰英氏の『吉原裏同心』(同)、葉室麟氏の『風の峠~銀漢の賦~』(2015年)など現代の時代小説家の作品をドラマ化しているのが特徴の一つ。現在は『上杉かぶき衆』などの作者である火坂雅志氏が原案の『かぶき者 慶次』を藤竜也の主演で放送している。