日本の原子力規制委員会は世界に冠たる「NRC(Nuclear Regulatory Commission)」になれるのか?
石川和男

原子力規制委員会は、2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機として翌12年9月に発足。独立性の高い"3条委員会"。公正取引委員会や国家公安委員会と同様、5人の委員は国会同意人事で任命され、その下に事務局として原子力規制庁が置かれている。

発足して間もない"黎明期"にある規制委・規制庁であるが、発足から2年でようやく最初の新規制基準の適合性審査を終え、事実上の合格を出したのが、九州電力川内原発。関西電力高浜原発がそれに続いている。しかし、いかんせん時間をかけ過ぎている。これは、規制する側(規制委・規制庁)の問題か、規制される側(原子力事業者(電力会社))の問題か、立場によって見方は異なるだろう。

ただ、原子力事業者が国民や地域住民から信頼されるべきであることは大前提であり、論を待たない。震災による福島事故の大きな教訓の一つは、失われた原子力規制に対する信頼性の再興だ。そうした視点で見ると、規制委・規制庁が真に国民から信頼される行政組織に進化していくためには、看過できない重大な問題がある。これらは、多くのマスコミが報じていないことだが、決してささいなことではない。本稿では、そのうちのいくつかを挙げながら考えてみたい。

(1)"原発40年規制"の審査手続き

"原発40年規制"とは、福島事故を最初に処理した当時の民主党政権のもとで、"科学・技術に基づかない、政治の空気"によって導入された悪しき規制の代表格。運転開始から「40歳の誕生日」で運転のライセンスが消滅し、「60歳までの運転延長」をしようとする場合には、40歳の誕生日までに、規制委・規制庁の審査をクリアしなければならないという規制だ。詳細は、今年2月25日付け現代ビジネス政策講談の拙稿『"原発40年規制"の根拠は「科学と技術」でなく「政治と空気」 ~ 専門家でない政治家が決めた危険な安全ルール』を参照されたい。
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この問題は、規制委・規制庁の発足後、"40年"の良し悪しも含めて検討することが国会から政府に付託されていたにもかかわらず、今日までに検討された形跡がない。

逆に規制委・規制庁は自ら、[1]原子力事業者が運転延長の申請書を提出できるタイミングを、40歳の誕生日の12~15ヵ月前までの間に限定し、すなわち審査期間をたった1年程度と短くし、[2]しかも、審査に当たっては、別の法令で要求している"バックフィット規制"にも40歳の誕生日までに合格していることを条件にしてしまったのだ。

現在、国内にあるすべての原発は発電をしていない。使用済燃料の管理などを行っているため、実際には稼働状態にある。原発には使用済燃料や使用前の核燃料が保管されているので、発電を行っていなくとも稼働中であり、それなりに危険な存在なのだ。40歳の誕生日を越えようが越えまいが、原発のこの危険性に変化はない。

したがって、原子力事業者から申請書の提出という「運転延長の意思表示」が出されているのであれば、40歳の誕生日を期限にするのではなく、発電再開までに"40年規制"と"バックフィット規制"の両方の審査に合格すればよいという条件に変更するべきだ。これに対して国内の原子力事業者から改革すべしとの声が聞こえてこないのは不思議なくらいだ。規制委・規制庁に対して過度に萎縮しているのだろうか?

それはともかく、規制委・規制庁は、こうした制度の在り方を早急に改革していく必要がある。そうでないと、明らかにおかしい。規制委・規制庁の中には、これがおかしいと思っている人は、まさか一人もいないのだろうか?