中国
落ちぶれた日本をよそに、日進月歩で変わりゆくアジアの姿 ~2015「春のダボス」レポート〈後編〉
「春のダボス」セッション会場にて

【前編】はこちらをご覧ください。

「既存のADB(アジア開発銀行)は、需要に全然追いついていない」

翌21日の議論は、中国が提起してまもなく発足するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に集中した。

まずは、午前中に行われた「アジアのインフラ整備を促進する」というセッションだ。親中派を自認するタイのAkrasaneeエネルギー大臣と、日本を代表するインフラ企業の日立製作所の田辺靖雄副社長が、インドネシアMetroTVの司会者Anwar氏を挟んで、激突する形となった。

Anwar氏:「インドネシアの大統領に就任したジョコウィは、『とにかくインフラ整備を急げ』と、口を酸っぱくして政府の各部署に唱えている。実際、アジアは今後5年間で、8兆ドルものインフラ整備を必要としているが、日本が主導する既存のADB(アジア開発銀行)は、需要に全然追いついていない。そこで中国が、スピードアップを掲げて、AIIBを作ると宣言した」

Akrasanee大臣:「2003年のタイは、いまのインドネシアと同様、多くのインフラ整備を必要としていたが、資金調達に限界があり、涙を呑む事業も多々あった。いまや中国がAIIBを設立して、われわれを助けてくれるという。これをわれわれは、大、大、大歓迎する! カネに色はついていないのだ。これまで中国はアメリカ国債ばかり買っていて、何をやっているのかと思っていたが、ついにアジアを振り向いてくれた」

田辺副社長:「インフラというのは、作って終わりではなくて、総合的な生活サイクルで見ないといけない。つまり、定期的な点検や補修も必要なのだ。そのためには、細かいデータ分析など、非常に高い技術を要求される。われわれはポーランド政府の依頼で、あるビルのプロジェクトを請け負ったが、ポーランド政府も最新の技術を要求してきた」

Anwar氏:「確かに日本の技術は世界一かもしれないが、現実としてアジアには大きな需要がある。そんな中、世界は紛争ばかりやっているというのに、中国が平和な建設をしましょうと名乗り出たわけだ。当然ながらアジアは歓迎する」

Akrasanee大臣:「その通りだ。10年前だったら、AIIBは必要なかった。だがいまや、アジア全体が必要としているのだ。それにもかかわらず、ADBは・・・。いや、ADBについてはノーコメントだ。ここがどんな機関であるかは、私が言わなくても、アジアの人々は誰もが分かっているだろうから(笑)」

Anwar氏:「つまりADBは、決定が遅いということだろう。アメリカと日本が主導する自由貿易システムであるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉を見ていても、それは分かる。主要メンバーであるアメリカと日本は、もう2年以上も頻繁に交渉を続けているのに、まだまとまらない。それで残りの10ヵ国はイライラしている。この頃は、TPPとはToo postpone(あまりに遅すぎる)の略称だというジョークも生まれているほどだ(笑)」

田辺副社長:「確かにスピードは遅いかもしれないが、これまでの日本企業の実績をみてもらえば分かるが、非常にきちんと仕事をしている。それにインフラというのは、作って終わりではなくて、長期にわたって残り続けるものだ。もっと長期的な視点で考えるべきだ」

Anwar氏:「日本企業の技術やサービスのレベルが高いことは、誰もが認めている。ただ中国企業は安く請け負ってくれ、おまけにバックに強い中国政府がついているので、アジアで人気を博しているのだ」

Akrasanee大臣:「いま強い政府という発言が出たが、アジアの国々というのは、欧米の国々と違って、政府が強大な権限を持っている。そして常に、政治の民主化との妥協を探りながら、物事を進めている。中国はこうしたアジアの国の心情を、よく理解している」

田辺副社長:「日立もこれまで、中国とはこれまで多くの共同事業を展開してきた。日中共同で電車の車両を作ったりもしている。日本企業は必ずしも、中国とライバルというわけではない」

Akrasanee大臣:「ではなぜ、アジアで日本だけAIIBに参加しないのだ?」

田辺副社長:「それは私ではなくて、安倍首相に聞いてほしい(笑)」

以上である。熱い議論を終えたAkrasanee大臣に話を聞きに行ったら、興奮冷めやらぬ様子で、再度捲くし立てた。

「さきほども言ったが、なぜ日本だけAIIBに参加しない? アジアは皆、友達ではないのか? 日本は友達が困っている時に、助けてやろうとしないのか? 日本へ帰ったら、安倍首相にそう伝えておいてくれ!」

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