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水素社会、自動ブレーキほか、トヨタ ReBORNのための〝本気〟の検証
トヨタは今後の生き残りをかけて「ReBORN」すなわち生まれ変わることを強く推進している。今年誕生60年となるクラウンもまた、ReBORNで若返りを図る

トヨタは今、本気で変わろうとしている。それがこの特集の冒頭でも触れた「ReBORN」である。ReBORNとはすなわち、生まれ変わりを意味し、トヨタが生まれ変わって「もう一度、新しいクルマの楽しさを創造したい」という企業メッセージを伝える言葉である。

トヨタがReBORNを提唱し始めたのは'11年10月である。リーマンショックによる経済打撃、販売低迷により58年ぶりの赤字転落、そしてリコール問題による、特に北米での販売の落ち込みによる経営危機が追い打ちをかける。さらに'10年から続いた円高に加え、'11年3月11日には東日本大震災が発生。岩手県や宮城県に拠点を持つグループ企業の関東自工やセントラル自動車、トヨタ自動車東北の工場が打撃を受けるなど、さらに経営を圧迫した(この3社は関東自工が吸収する形で経営統合し、現在のトヨタ自動車東日本となる)。

こうした経営危機に瀕し、トヨタは「ReBORN」を決意する。それまでの拡大路線から大きく舵取りをし、全社を挙げた原価低減を徹底するとともに商品力の向上を目指した体制作りに取り組んでいる。その取り組みのひとつが'13年3月27日に発表された、新プラットフォーム戦略「TNGA」(Toyota New Global Architecture)だ。

従来、車種ごとに最適化していた開発プログラムを大幅に見直し、標準仕様部品の採用を拡大し、複数の車種にまたがる共通部品を一気に、大量に調達することでコストを低減するという考え。もちろんコスト低減を狙っただけの取り組みではなく、ベースとしてあるのは、「もっといいクルマ」の実現を目指すということ。クルマを骨格から変え、低フード化、低重心化を実現し、かっこいいデザイン、良好な視界確保も運動性能の向上など感性に訴えかけるクルマとなるよう開発される次期型プラットフォームという位置付け。'13年3月の「TNGA」発表時には'15年に発売する新型車から順次導入するとされている。プラットフォームだけではなく、パワートレーンも低重心、高性能ユニットを開発し順次搭載と掲げている点にも注目。

TNGAについては、どうしても部品共通化によるコスト低減といった話題で語られてしまうのだが、その大前提にあるのは、あくまでも「いいクルマを開発し世に出していくため」という大前提があることを忘れてはならない。そのための手法として、中長期的な商品計画の下、複数の車種で同時に開発を進行できるものは同時開発をすることで工数を減らすことが可能となり、また、部品調達を一括化することで効率化を図ろうということが狙い。まさに、トヨタが掲げる「ReBORN」だ。

「今年は、トヨタが現状に満足してしまい、ReBORNを果たせないまま衰退に向かうのか、着実かつ大胆に歩み続けることでトヨタグローバルビジョンに近づけるのか、その分かれ目の年だと思っている」と豊田章男社長は決意を表明している。

本気(1) トヨタは水素社会実現に向けて世界に先駆けて〝本気〟で取り組む

これはもう、今トヨタが最も「本気」を見せている分野のひとつと言って間違いない。今から17年前、'97年に初代プリウスを投入し、ハイブリッド時代を切り開いた〝あの時〟よりも水素社会実現に向けたトヨタの取り組みは徹底している。

昨年11月18日に発表、12月15日より販売を開始した燃料電池車「MIRAI」は、世界初の一般向け市販燃料電池車である。一般向けとはいうものの、実情は生産台数がかぎられる立ち上がり当面は政府や自治体、法人ユーザーなどが優先されているようだが、順調に受注を受けて増産を決定。現状の年間700台の生産規模を'16年には年間2000台、'17年には3000台へと拡大する計画。すでに1500台以上の受注を抱えており、今の生産規模では納期が2年以上となることから増産体制を整えるという。

燃料電池車の普及についてトヨタは驚くべき手法をとった。前号でも紹介しているように、トヨタが所有する燃料電池に関連する約5680件もの特許を無償で公開した。すでに他メーカーから複数の照会があるという。トヨタが特許を無償で公開した理由は、トヨタ一社で燃料電池車の普及を推進しても充分な効果が得られないと見て、特許を公開することで多くの自動車メーカーが燃料電池車を投入すれば、普及が拡大するという狙いがある。燃料電池車の普及拡大には水素ステーションの整備が不可欠で、これがインフラ整備の必要がなかったハイブリッド車との大きな違い。豊田章男社長はある新聞のインタビューに「燃料電池車と水素ステーションの関係は花とミツバチのようなもの」と例えている。お互いに助け合いながら存在し合う関係性という意味での例えである。そのためにも、特許を無償公開することで、燃料電池車の拡大を図り、水素ステーションの整備にも弾みをつけたいということだ。

また、トヨタは東京オリンピックが開催される2020年までに燃料電池車を複数車種ラインアップさせる計画がある。'13年の東京モーターショーで公開された次世代型タクシーをはじめ、次期型エスティマや次期型クラウン、次期型レクサスLSなどに燃料電子モデルが加わることが予測されており、トヨタが「本気」で取り組む以上、次々と燃料電池車が登場することになる。

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