米倉誠一郎の「2枚目の名刺」を持とう
最終回  「2枚目の名刺」で利益を上げよう

一橋大学イノベーション研究センター教授で六本木アカデミーヒルズの「日本元気塾」塾長でもある米倉誠一郎さん。米倉教授が提唱する新しい働き方を通称 「2枚目の名刺」と名付けました。5月20日には『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書刊)が発売になります。その「2枚目の名刺」を使いこなす働き方の大事なエッセンスを、10回にわたり米倉教授の短期集中講座としてお届けしています。第1回『「2枚目の名刺」をまず作ってしまえ』から始まって、最終回の今回は『2枚目の名刺』を「清く貧しく」使ってはもったいない、というお話です。

 NPOで利益を上げよう

米倉さんの最新刊『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書5月20日刊)

私が書いた『2枚目の名刺 未来を変える働き方』は、起業家向けの本ではない。

起業家としてベンチャーを立ち上げたいのなら、他の本をお薦めする。ただし、社内ベンチャーをはじめとして会社にいながら事業を起こすことはどんどん奨励したい。

自分を会社の中でプロフェッショナルとして確立させ、さらにその資源を多重利用していこうというのが本書の趣旨だ。すなわち、人生の選択肢をもっと拡げて、もっと愉快に生きようということが伝えたいメッセージなのである。

その時に、2枚目の名刺の受け皿としてNPOやソーシャルビジネスが重要な役割を果たすことは既に述べた。

なぜソーシャルビジネスが必要となったのかといえば、第1に資本主義が勝ち残ったからだ。資本主義における富を創り出す方法としてビジネスが持っている手法が、いまのところ他のいかなる手法よりも優れているということが明らかになったからである。

第2は、もはやほとんどの国が財政破綻に陥っており、昔のようにふんだんに税金を使って社会的問題を解決していくことが出来なくなったためである。

したがって、ビジネスの手法を使って社会的課題を解決するソーシャルビジネスという仕組みの構築が喫緊の課題となったのである。

実は、ソーシャルビジネスをうまく活用し始めたのは、先進国よりも発展途上国が先だった。一方的に資金を送られるだけの国際援助ではなく、個々人の経済的自立ができないと貧困は解決できないことを学び、そこにビジネス手法を使って自立を助けるソーシャルビジネスが生まれたのである。

税金や国際援助に代わる仕組みとしてビジネスとして社会問題を解決するこの手法は、援助慣れした受動的途上国の人々に尊厳と誇りを与えて、大きな成功を収めた。

したがって、ソーシャルビジネスは利益を上げて、途上国に自立を促していかなければならない。

そもそもNPOは利益を上げてはいけないというわけではない。前述したようにNPOは利益を上げることを目的としない組織形態ではあるが、利益を上げなければ活動の継続を支えることはできない。しかも、利益を上げるのはとても難しいことだから、そこで働く優秀なスタッフにはきちんと給料を払う必要がある。

社会的問題の解決という難しい仕事を任せる人材をNPOで活かそうとするなら、その能力に報いるだけの処遇を与えないといけない。そうでないと、優秀な人材が集まってこない。

日本のNPOは悲しすぎる。有名大学の修士を出て、NPOで頑張っていた男性が、“寿退社”するというような話をよく聞く。「NPOは続けたいのですが、結婚するので、ちゃんとした給料をもらえる会社に就職します」。これはやはりおかしなことだ。

日本のNPO経営者たちは、給料を上げると批判されるので上げづらいと言う。日本ではNPOのことを慈善団体だと勘違いしていて、それが常識として流布してしまっているからだ。

NPOはチャリティなのだから「清く貧しく生きるべき」、となってしまっている。間違った情報とはいえ、それを彼らの側から変えるのは難しい。だから、優秀な人材がプロボノとして手伝うことで、組織としての水準を上げ、周りからこんないいことをやって実績を上げているのだから、給与を上げるのは当然であるという風潮をつくりたい。

優秀な人こそ、2枚目の名刺をつくり、志を持って彼らを手助けすべきだ。日本の2枚目の名刺ホルダーたちが、NPOを豊かな組織に変えていったと言われてほしい。そんなふうに2枚目の名刺を使ってくれる人が、この国に一人でも増えていくことを心から願っている。

清く豊かで正しい日本へ向けて。

(この連載は、『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書5月20日刊)の第5章のエッセンスを10回に分けて連載しました)

米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう) 日本元気塾塾長。一橋大学イノベーション研究センター教授。
1953年東京生まれ。アーク都市塾塾長を経て、2009年より現職。
一橋大学社会学部、経済学部卒業。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(PhD.)。
1995年一橋大学商学部産業経営研究所教授、97年より同大学イノベーション研究センター教授。2012年〜2014年はプレトリア大学GIBS日本研究センター所長を兼務。
現在、一橋大学の他に、Japan- Somaliland Open University 学長をも務める。また、2001年より『一橋ビジネスレビュー』編集委員長を兼任している。
イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組 織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。
著書は、『創発的破壊未来をつくるイノベーション』、『脱カリスマ時代のリーダー論』、『経営革命の構造』など多数。今回の連載の「2枚目の名刺」をテーマにした最新作『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社刊)が5月20日発売となる。


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