米倉誠一郎の「2枚目の名刺」を持とう
第9回  「2枚目の名刺」は何歳からでも遅くない!

一橋大学イノベーション研究センター教授で六本木アカデミーヒルズの「日本元気塾」塾長でもある米倉誠一郎さん。米倉教授が提唱する新しい働き方を通称 「2枚目の名刺」と名付けました。5月20日には『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書刊)が発売になります。その「2枚目の名刺」を使いこなす働き方の大事なエッセンスを、10回にわたり米倉教授の短期集中講座としてお届けしています。第1回『「2枚目の名刺」をまず作ってしまえ』から始まって、第9回目の今回は『2枚目の名刺』はいつ作っても遅くないです。

 すぐに「2枚目の名刺」をスタートさせよう

米倉さんの最新刊『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書5月20日刊)

「一番若いときはいつか?」という質問をされたとしたら、どう答えるだろう。

「12歳、いや18歳くらいでしょうか」と答えるかもしれない。

だが、そうではない。いま、この瞬間が一番若いのである。18歳にはどうあがいてももう戻れないから、いつが若いかと問われれば、いまが一番若いのである。

さらに「いまが一番若い」と言い終えた瞬間に、もう僕たちは歳を取り始めているのだ。したがって、やりたいことは今すぐやるしかない。思ったときが一番若い、やろうとしたときが一番若い。

年齢をやらない理由にするということは、結局永遠に何もしないということだ。

ある雑誌で、東大の柳川範之(やながわ・のりゆき)教授とウシオ電機の牛尾治朗(うしお・じろう)会長が「75歳まで納税者になれる社会へ」を寄稿していた。現代日本においてきわめて重要な提言だと思う。

75歳まで働ける人は働いて、税金をしっかり納める体制にすることが正しい。これは、年金支給を遅らせるだけでなく、税収を増やすという二重のメリットになる。

75歳まで働くといっても、朝9時から夕方5時までの正規雇用という働き方がすべてではない。色々な形で雇用を創り出す知恵が必要である。オランダと比べると、日本の平均労働時間は年間約400時間も多い。

一日8時間労働として計算すると、我々は50日近くも多く働いているということになる。オランダ、ドイツなどは、みんなが自分の生活に合わせた働き方をして、ワークシェアもしっかり行っている。

多様な働き方で、雇用を作り、高いGDPを実現しているのである。ドイツのSAPで働いている友人に聞くと、年度始めに担当部署でまず第一に決めることは、それぞれがいつ休みを取るかだという。有給休暇が年間40日くらいあるそうだが、ほぼ全員がそれを消化するし、そのために仕事の生産性を上げることに必死だという。昔は、だから欧州病に罹るのだと日本人はうそぶいていた。

しかし、ドイツもオランダも一人当たりのGDPでは18位と11位で、日本の24位よりもはるかに高いパフォーマンスを示している。決して欧州病などではなく、ワークスマートなのである。

多くの人が多様な働き方をして、多くの人が税金を納める働き方は、生産性を上げるだけでなく、消費も拡大する。男性一人が朝7時から夜の11時まで働いて経済を支えるという日本の仕組みには既に限界が来ている。

専業主婦がカードによる消費を控えるのは、それが亭主の家族カードのせいでもある。しかし、彼女たちも働いて自分自身で口座を開き、自分自身のカードを作れば、その範囲では遠慮のない消費が加速される。

経済を円滑に回す基本は消費である。景気対策を名乗ったバラマキよりも、消費を増やす循環をつくっていくほうが絶対に大事なのだ。

さて、そうした社会の実現にとっても、2枚目の名刺は重要な役割を果たす。第二の人生をしっかりと歩むためにも、プロフェッショナルとしてのスキル向上とその多重利用が50歳代以降の人生を豊かにするからだ。

しかし、多くの中年日本人はキャリアプランを会社任せにしてきたため、その準備が整っていないというのが実情だろう。だからといって諦めるわけにはいかない。高齢化社会は既に現実のものだからだ。「このままではいけない」、「これではまずい」と思った瞬間に、2枚目の名刺をスタートすればまだ間に合う。何しろ、いまが一番若いのだから。