米倉誠一郎の「2枚目の名刺」を持とう
第8回 ソーシャルメディアを有効活用する

一橋大学イノベーション研究センター教授で六本木アカデミーヒルズの「日本元気塾」塾長でもある米倉誠一郎さん。米倉教授が提唱する新しい働き方を通称 「2枚目の名刺」と名付けました。5月20日には『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書刊)が発売になります。その「2枚目の名刺」を使いこなす働き方の大事なエッセンスを、10回にわたり米倉教授の短期集中講座としてお届けしています。第1回『「2枚目の名刺」をまず作ってしまえ』から始まって、第8回目の今回は『2枚目の名刺』を可能にするSNSの使い方についてです。

ゴープロはなぜ成功したのか

2010年にチュニジアから始まったジャスミン革命は、エジプト、中東に飛び火し、さらに中央アジアから香港、台湾にまで瞬時に波及した。

民主化への大きな流れとなったジャスミン革命だったが、これら一連の動きには革命的リーダーは存在していない。その代わりに、フェイスブック、ユーチューブ、ツイッターなどの「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」(SNS)が情報発信に起爆剤的な役割を演じたことで、別名「SNS革命」とも呼ばれたわけだ。

今の時代、小さな一人ひとりの力が積み重なり大きくなると、ものすごい破壊力を生み出す。インターネットの普及とテクノロジーの進化が、創発的破壊への動きを加速させ、ビジネスの在り方も大きく変えようとしている。

いま、アウトドア愛好家ばかりか普通の若者の間で大流行しているのが「ゴープロ(GoPro)」というビデオカメラだ。

液晶モニター、ズームや手ぶれ防止機能などがついているわけではない。ただ単にいかなる衝撃や悪天候にも強いという四角い変哲のないビデオカメラだ。

開発したのは、サンフランシスコに住むサーファー。彼は自分がサーフィンをする時の過酷な状況下でのビデオ撮影を可能にすべく、余分な機能をいっさい排したこのビデオカメラを製作した。尖った愛好家1000人が買ってくれればいいだろうという発想だった。

しかし、この尖り具合が受けて、登山、スキー、動物観察など、あらゆる冒険家たちが愛用し、そのカッコ良さに惹かれて冒険をしない多くの若者たちがファッションアイテムとして購入しているのである。このヒットの背景にはSNSの進展がある。

ゴープロ愛好者が撮影したエッジの利いた映像(サーフィンシーンはもちろん、ワニや白熊の口の中)がフェイスブックやユーチューブを通じて世界中に流れ、多くの若者の目に触れることとなった。大した宣伝もせずに、ゴープロは世界中に知れわたったのである。

同じようにセレボ(Cerevo)という小さな家電メーカーがある。同社を創業した岩佐琢磨(いわさ・たくま)君は、パナソニックに勤務していたときに無線LAN搭載のデジタルビデオカメラをつくりたいと考えた。撮った写真は全自動でクラウド上にアップされ、しかもカメラ単体でUstreamなどへのライブ配信ができる世界で初めての商品だった。

事業部長に「こんなものをつくりたい」と提案した岩佐君。

「何台売れる?」「1000台くらいでしょうか」「俺たちは7兆円の会社だ。もっと万人が買う商品を考えろ!」といったやり取りがあったそうだ。

確かに、何万人の固定費を抱える大手家電メーカーでは、彼がつくりたいようなユニークでニッチな製品はつくれない。結局万人受けするために、ズームや手ぶれ防止機能などを次々に付け加えるうちに、エッジの利かないどこにでもあるような商品になり、売り上げも伸びないという悪循環に陥るのである。

米倉さんの最新刊『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書5月20日刊)

彼が、この上司とのやり取りから、「2枚目の名刺」を持ち、起業にいたる物語は『2枚目の名刺 未来を変える働き方』に譲るが、ECインフラやSNSの発展で、日本ばかりか世界に向けて簡単に安価に宣伝、直販ができるようになっているのだ。

今の時代、1000人の尖った人たちの心に突き刺さる商品をつくることができれば、世界の50ヵ国の同じように尖った人たちの心にも突き刺さる。そうすると、単純計算で5万台の売り上げが見込める。実際にセレボの商品は、そうやって世界各国で売れている。

ITは、ものすごいビジネスチャンスをもたらしている。「そんなことができるのは一握りの起業家だけでしょう」と諦めてはいけない。少し勉強すれば、誰でも必ず使いこなせる技術なのだ。あとは、100人の心に突き刺さる何かを探し当てればいい。そんな2枚目の名刺は、瞬時に大きな共感を呼べる時代になっているのだ。

(この連載は、『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+α新書5月20日刊)の第5章のエッセンスを10回に分けて連載しています)

米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう) 日本元気塾塾長。一橋大学イノベーション研究センター教授。
1953年東京生まれ。アーク都市塾塾長を経て、2009年より現職。
一橋大学社会学部、経済学部卒業。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(PhD.)。
1995年一橋大学商学部産業経営研究所教授、97年より同大学イノベーション研究センター教授。2012年〜2014年はプレトリア大学GIBS日本研究センター所長を兼務。
現在、一橋大学の他に、Japan- Somaliland Open University 学長をも務める。また、2001年より『一橋ビジネスレビュー』編集委員長を兼任している。
イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組 織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。
著書は、『創発的破壊未来をつくるイノベーション』、『脱カリスマ時代のリーダー論』、『経営革命の構造』など多数。今回の連載の「2枚目の名刺」をテーマにした最新作『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社刊)が5月20日発売となる。 

日本元気塾第4期塾生募集中! 申し込みは5月14日まで。
http://www.academyhills.com/


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