雑誌
米倉誠一郎の「2枚目の名刺を持とう」
第3回 人生の多角化は強い

元気塾塾長の米倉誠一郎氏                    (写真・御厨慎一郎)

一橋大学イノベーション研究センター教授で六本木アカデミーヒルズの「日本元気塾」塾長でもある米倉誠一郎さん。米倉教授が提唱する新しい働き方を通称 「2枚目の名刺」と名付けました。

その「2枚目の名刺」を使いこなす働き方の大事なエッセンスを10ヵ条にして、10回にわたり米倉教授の短期集中講座を お届けします。第1回『「2枚目の名刺」をまず作ってしまえ』、第2回『月並みだが大切なのは「2枚目の名刺」に込める志』に続く3回目の今回は、プロとは何かについて。

3    「スキル」とプロフェッショナリズム

 これからの時代、カリスマ的リーダーはもう要らないと思っている。そんなリーダーの替わりに今必要とされているのはプロフェッショナルだ。例えば、政治をするなら政治のプロ、ビジネスならビジネスのプロ、農業ならば農業のプロ、蕎麦打ちならば蕎麦打ちのプロ。

 僕はプロフェッショナルという言葉が好きだ。どんな分野でもその仕事を完璧にこなすというニュアンスに信頼性がある。各自が自分の仕事をきちんとやれば、それが大きな力へとつながっていく。街を綺麗にしたいならば、まず各人が自分の家の前を綺麗にする。そうすれば、街は確実に綺麗になる、そんな感覚だ。

 プロフェッショナルのコアはスキル、どこに行っても、どんな場面でもその分野で堂々と戦うことができるスキルだ。「何でもできますよ」と言う人は「何もできない」ことが多い。「何ができるの」と聞かれて、「これならできます」、「おお、じゃあやってもらおう」。そんな強いスキルを持っていることが大切だ。

 そのスキルを活かすのはどこなのか。それは自分が勝てるあるいは好きなフィールドに限る。そこでは、言われたことを言われたままに提供するのではなく、期待以上のかたちにして提供できるはずだ。要望に対して、それ以上の付加価値をつけることができるのもプロフェッショナルだと思う。

 カリスマ的リーダーのいる組織は一見強そうに見えるが、その人が抜けてしまうと組織崩壊が起きやすい。これからの組織にはカリスマを育てカリスマに依存するのではなく、プロフェッショナル・スキルのレベルを向上させ、そのスキルの持ち主たちがチームとなるような仕組みの構築だと思う。

 かつて、日産のカルロス・ゴーンさんに「組織と個人」のどちらが重要かという質問を発したことがある。心の中では、「どちらも重要だ」といった中庸な返事が返ると思っていたのだが、意外にも「個人だ」という答えが返ってきた。しかし、真意は個人重視の組織観ではなく、「強い個人が集まらなければ、強い組織は創れない」というものだった。

なぜ意外だったのかというと、「われわれ日本人は、一人ひとりは弱いかもしれないが組織になれば強い」と思い込んでいたからだ。しかし、弱い個人が集まったチームは強い個人が集まったチームに絶対に勝てない。ゴーンさんは強いチームの本質を語っていたのだ。そろそろ僕たち日本人も強いプロフェッショナルが集まったチームの一員として生きる道を模索しなければならない。

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