雑誌
患者さんには、言えません 医者が「やりたい手術」「本当はやりたくない手術」がん・心臓病・脳卒中・全身麻酔……(下)

医者には医者の都合がある

医者が患者には言えない本音は、こうした「やりたい手術」ばかりではない。じつは、実際に医療の現場で行われていても、医者が「本当はやりたくない」と思ってやっている手術も数々あるのだという。

「最大径が3cmを超える大きさの脳動脈瘤は、手術中に破裂して患者が死亡したり、重篤な後遺症が残ってしまうリスクが高い。『神の手』と呼ばれるよ うな医師がやればうまくいくのでしょうが、非常に難しい手術なんです。自分の血圧を測りながらこの手術をしたことがあるのですが、ミスをしそうになった瞬 間の血圧は200を超えていました。長時間に及んで激しいプレッシャーを感じますから、医者自身も精神状態がおかしくなってきます」(都内大学病院・脳神 経外科医)

冒頭の腹腔鏡手術の例のように、功名心からリスクの高い手術を進んでやりたがる医者もいるが、当然ながら、リスクが高い手術だと思ったら、守りに入って「絶対にやらない」という医者もいる。前出の南淵医師が語る。

「リスクが高いと判断したら、別の医者に紹介するか、手術をせずに『様子を見ましょう』と言ってとりあえず薬を処方し続ける医者もいます。

たとえば心臓病の場合、2つの弁を交換して、狭窄した大動脈と冠動脈の治療も必要、などと一度に何ヵ所も治療しなければいけない手術は大変です。手 術をする場合、医者にも覚悟が必要。手術できるかできないかの判断は医者によって異なるので、他の医者にかかれば治せる病気でも、医者によっては『手遅れ です』と言われることも多いのです」

がんの手術についても、こんな意見がある。

「食道がんの外科手術は、胸や腹部まで大きく開かなくてはならず、手術時間も長くて合併症のリスクも高い。それなのに再発することも多いので、正 直、やりたくない手術です。外科医ではありますが、放射線や抗がん剤治療を勧めてしまうこともある」(都内総合病院・消化器外科医)

手間暇がかかって面倒な手術も医者がやりたくない治療のひとつ。時間がかかるのに儲けは少ない、という理由で病気を放置する医者もいる。前出の工藤医師は、こんな指摘をする。

「たとえば、精神疾患や認知症を抱えた患者さんは、患者さんの顔を見ながらじっくり話を聞かなければ解決できません。でも、いくら時間をかけても収入は変わらない。なので、ただ薬を処方するだけで患者を薬漬けにしてしまう医者は多いのです」

治療ばかりではない。手術前には欠かせない検査にも、医者が本当はやりたくないと思いながらやっているものがある。その中の一つが、「血管造影検査」だ。