広島カープの苦境を救え 天才・前田智徳、ただいま参上!

あの落合が認め、イチローが憧れた打撃の求道者が、第二の人生でキャラクターを変えた。雄弁、快活、目を疑うような変わりぶり。そんなニュー前田が、苦しむ古巣のために、いま立ち上がる。

すべてはカープのために

現役時代は周囲を寄せ付けなかった孤高の天才打者が、変わった。ユニフォームを脱ぎ、スーツを身にまとう前田智徳(43歳)はよく笑い、よくしゃべる。解説者1年目の開幕前の地元イベントでは、選手名鑑を持って登場。『パ・リーグの選手を勉強しなければいけない』と言って、会場のファンを笑わせた。広島OBが、前田が豹変した理由を明かす。

「前田は自分のためだけでなく、カープのために頑張っているんです。球団アドバイザーとしてカープに籍を置き、慣れないテレビやイベントに出てPRに勤しんでいる。『このテレビの世界では、僕はルーキーです』と言って、局側の要望に何とか応えようとしている。新しい世界で生きていく覚悟の表れだよね」

カープが予想外の低迷に苦しむなか、ファンにとってはテレビで前田の「キャラ変」した姿を見るのは、楽しみでもある。

「彼は理想主義者。野球をやめた今、テレビに出る人間として、また理想を追い求めているんでしょう」(前出の広島OB)

それが、前田智徳という男の生き様なのである。

現在、前田と同じ広島ホームテレビで野球解説者をつとめる元広島のエース、北別府学は、前田のよき理解者だ。

「実は僕も、現役時代は前田と同じような性格で、我を貫くようなところがありました。たとえば、登板日にファンの方に軽い感じでサインをもらいにこられるのもイヤだった。野球だけに集中したいから、周囲を寄せ付けないよう、自らバリアを張るんです。世間から見れば変わり者かもしれませんが、それは前田も同じ。プロに徹した職人なんです」

前田より14歳上の北別府との間には、有名なエピソードがある。

前田がプロ3年目の'92年、7月に通算200勝を達成したものの、8月以降勝ち星から遠ざかっていた北別府は、9月13日の巨人戦に先発し、5回二死まで1-0とリード。しかし、巨人・川相昌弘の飛球にセンターの前田が飛び込み、後逸。ランニング本塁打となり、前田は北別府の勝利投手の権利を消してしまった。

その後、1-1のまま迎えた8回、前田は巨人の抑え・石毛博史の外角直球をとらえ、ライトスタンドへ勝ち越しの2ランホームランを放つと、涙を流しながらダイヤモンドを一周した。