TBSの60周年特別企画『天皇の料理番』は、連ドラ界の潮流を変えるかもしれない
『天皇の料理番』公式ページより

現時点での4月期ベスト作品

4月期連続ドラマのしんがりを務める形で、TBS『日曜劇場/天皇の料理番』(午後9時)が26日にスタートした。同局の60周年特別企画と銘打たれ、鳴り物入りで制作されただけあって、さすがに力作だ。

4月期は話題の連ドラが目白押しだが、筆者は現時点でのベスト作品に挙げたい。まず、主人公・秋山篤蔵に扮する佐藤健(26)の演技が、事前の想像と違って素晴らしい。

これまでの佐藤は現代劇への出演が中心で、役柄も二枚目役が目立ったため、筆者は明治期に実在した生身の人物をリアルに演じられるかどうかを勝手に危ぶんでいた。だが、それはお門違いの杞憂に過ぎなかった。

佐藤の演技には説得力がある。二枚目をかなぐり捨て、おっちょこちょいだが、思い込んだら命懸けとなる男・篤蔵になり切っている。二枚目が三枚目を演じるのは難しいものだが、時折見せるマヌケ面にも違和感がない。むしろ親しみを感じさせる。

篤蔵の妻・俊子役の黒木華(25)の演技も出色。この人の場合、昨年の映画『小さいおうち』(監督・山田洋次)で珠玉の演技を見せて、ベルリン国際映画祭では最優秀女優賞に輝いたが、その快挙が決してフロックなどではなかったことをあらためて証明している。抜群にうまい。

黒木は天才肌なのか、目と口元の動きだけでも見る側に感情を伝えることが出来てしまう。オーバーな仕草や仰々しい話し方をしなくても、扮した人物の心象風景を克明に表せる。見る側に表現したいことを静かに過不足なく伝える。今回も同じ。内気だが、芯は強く、篤蔵を心底愛する俊子という人物像を、初回だけで早々と見る側に伝え切ってしまった。

近年、顔芸の出来る人や必死の形相を頻繁に見せる人が演技巧者と呼ばれる傾向があるが、それは違うだろう。なにしろ、実社会にそんな人はまず存在しないのだから。オーバーな演技は目立つのだが、不自然でもあるのだ。

そんな人の演技は共演者の繊細な演技を呑み込んでしまい、全体の調和を乱しかねない。ドラマは個人競技ではなく、あくまで団体戦なのだから、自分ばかり目立ってしまう人は演技巧者とは言えない。ベルリン国際映画祭で認められた黒木こそ名優の国際基準に違いない。

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