雑誌 企業・経営
カルビー・伊藤秀二社長「継続的な成長の源は『壊す勇気』。商品は『成熟期』を経て、売り上げが落ちていくと言われますが、そんなことはありません」

『かっぱえびせん』『じゃがりこ』など数々のヒット商品で知られるカルビー。だがロングセラー商品の人気に甘んじることなく、野菜を揚げたチップス『ベジップス』などヘルシーな新商品も発売し、ここ5年右肩上がりで成長を続ける。この起爆剤は、'09年に創業家の意思で外部からCEOを招聘し、同時に、生え抜きの伊藤秀二氏(58歳)を社長へ起用したことと言われる。その伊藤氏に話を聞いた。

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いとう・しゅうじ/'57年福島県生まれ。'79年3月に法政大学経営学部を卒業し、カルビーへ入社。'01年に執行役員へ就任し、'09年より現職する。本社機能を東京・丸の内へ統合、間仕切りを可能な限り少なくし、座席も毎日ランダムで決めるなど、風通しのよい会社を作るための斬新な改革を実行した ※カルビーのwebサイトはこちら

ストーリー

じつは、スーパーで買ってきたジャガイモをスライスして揚げても、弊社の商品のようなポテトチップスにはなりません。ポテトチップスにするジャガイモには『トヨシロ』など向いた品種があります。商品を一年中お届けするために、収穫後、光を当てず、芽が出ないよう適切な温度管理も必要です。また、ジャガイモのわずかな柔らかさ、硬さの違いを見逃さず、スライスする時の厚さをごくわずかに変えるなどの調整をしています。

常にあの「パリッ」とした食感を出すには、栽培、貯蔵、加工などに様々なノウハウが必要なんです。ただ、弊社は明るいイメージの企業なので、こうした苦労話はあまり伝わっていないのですが(笑)。

味作り

欧米に行くと、ポテトチップスには、塩味など数種類のフレーバーしかありません。日本でこれだけ様々な種類があるのは我々のせいかもしれませんね(笑)。商品開発で難しいのは「お客様をがっかりさせない冒険」をすること。100円前後の商品でも、口に合わないものを買ってがっかりしたくないはずです。だから、甘いポテトチップスなどは、食べてみたらおいしくてもなかなか手にとってもらえませんでした。

しかし冒険をしないで守りに入ると、小売店で「これ食べてみたい!」というワクワクした気持ちを感じていただけません。冒険的でも売れる商品は、たいてい「頭にイメージが浮かぶ味」。例えば、日本ケンタッキー・フライド・チキンさんとコラボした『骨なしケンタッキーパリパリ旨塩味』は人気が高かった。皆さんの頭に「こんな味かな?」というイメージがあったから試していただけたのだと思います。

若手 新入社員時代、配属された名古屋工場での記念写真。一番右が伊藤氏。『チーズビット』の製造を担当した

企業哲学

弊社へ入社したきっかけは「面白そう」だったから。私は就職活動の時「食品」「アパレル」などと業界を決めず、興味が持てる企業を探しました。そんな中、カルビーは先にお伝えしたようなストーリーがあり、当時の企パンフレットに「食品ビジネスは21世紀の基幹産業」という文字があった。どこかから買ったジャガイモを揚げていたわけではなく、農家の方と協力し、イモからつくっていたのです。面接で「北海道でイモの倉庫の管理をやれといわれてもできますか?」と聞かれ「そんな仕事もあるのか」と新鮮に感じ、より興味を持ったことを覚えています。

民主主義

課長になった時、上司から「勘違いするなよ」と助言されたことが記憶に残っています。「課長というのは課長という仕事であって、課長以下の役職の人よりえらくなったわけではない」と言うのです。どのような役職も、その機能を全うすることを求められるだけで、人としてえらいわけでなく、威張ってよいわけでもない。社長になった今も「いいことを教わったなぁ」と思い出します。

組織の土台

私が社長になった理由は、様々な方たちとコミュニケーションをとってきた経験があるからだと思います。30~40代にかけ、食品の規制緩和に向けて動く仕事をした時、学者、官僚など社外のネットワークを必要としました。その方たちに、直接「規制緩和に向けて動いているから」と教えを請うても信頼関係がなくては人は動いてくれません。