【有料会員限定記事】私がヴァージン航空のビジネスから学んだ5つの教訓(リチャード・ブランソン)
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これまでの読者ならご存じでしょうが、私がヴァージンアトランティック航空をはじめたのは、他の航空会社を利用したとき私が受けたひどいサービスを、自分自身で何とかしたいと思ったからです。しかし驚いたことに、私はグループ企業の中でもこの航空会社からビジネスとイノベーションについてもっとも学ぶことになりました。

1984年にヴァージンアトランティックを起ち上げたとき、物事はそうスイスイとは進みませんでした。収支の帳尻を合わせることがひと苦労でした。そんなことは、スタートアップのほとんどが同じだと言っても、扱うものが飛行機となるとその数字は桁違いに大きくなるのです。

航空業界の状況をこれまで30年以上打破し、多くの教訓を学びました。以下はその中のトップ5です。

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1.従業員がハッピーなら顧客もハッピーに

不愉快な配膳サービス1つで最高のサービスも台無しになりかねません。配膳チームにはもっとも神経を注ぐべきです。その他のことは何とかなります。

私は自社の従業員そのものが「製品」なんだと口を酸っぱくしてきました。とりわけこれは航空ビジネスについて言えることです。搭乗客はまさに「囚われの聴衆」なのです。従業員と顧客が、何時間も一緒に空を飛ぶ金属管のなかにいるということを、ほかの事業で考えるられるでしょうか?

航空会社の客室乗務員にとっては、飛行中の毎分が舞台の上に立つ役者と同じで、時にはその観客の要求は実に厳しいものです。誰かが「とても信じてもらえないでしょうが、先週あの航空会社が私にしたことといったらもう・・・」と地上で鬱憤を誰か晴らしたら、実はたった1人の従業員の行動を非難していたとしても、その不始末の責任は航空会社全体に及ぶものです。

私たちは早いうちから、もし顧客をハッピーにしたいのならばハッピーな従業員が必要でだ、従業員のサービスには主体性がなければならない、と理解しました。また製品開発やイノベーションの初期段階から乗務員に参画してもらうことが大きな違いを生むことにも気がつきました。結局、「お客様、本当にこのサービスを考えた人は何を考えていたんでしょうね」と乗務員に語らせるより、「新しいサービスをお褒め頂いて光栄です。私ども全員が考えたのですよ」と語ってもらったほうがいいに決まっているのです。

2.顧客がいつも正し(くな)いわけではない

こう言うと変に思われるかもしれません。顧客の言うことは大事ですが、常に正しいとは限りません。私たちと顧客が多くのアイデアを一緒に育み、それが実行に移されたことは数多くあります。しかしイノベーション戦略は顧客のお好み次第、ということになった後に気づくことは、顧客から出てくるアイデアというものは、彼らがすでに経験済みのことに限られるということです。ビデオスクリーン経由での食品の注文やオンボードメッセージという斬新なアイデアは、実はヴァージンアトランティックの従業員から出された提案です。

3.アイデアにばかげたものなどない

従業員たちのどんな奇抜なアイデアであっても、専門家と一緒に検討できるような協力的な企業文化を打ち立てるべきです。

例えば、ヴァージンの上級クラスの搭乗客が食事後も、飛行機を型取った小型の塩とコショウ入れ(※)を2つ、いつまでも「借りている」ことに乗員が気づいたときのことです。乗務員の1人が、それらの底に「ヴァージンアトランティックからの盗品」と印刷したら、と言ったのです。冗談が転じて見事なアイデアとなりました。実行してみると、あっという間にコレクター商品になりました。バターナイフの場合も同じでした。「ヴァージンアトランティックからのStainless Steal (ステンレススティール)」と刻み込んだのです。

4.顧客にリピーターになってもらう

他社のお粗末な機内サービスを経験した私から見ても、顧客の期待にそのまま対応することは必ずしも良い結果につながりません。当時、私の航空会社への期待は非常に低く、悲しいことに、それがお粗末なサービスと釣り合っていたのです。

実はどんなビジネスでも、成功のポイントは顧客の期待感をこちらから仕掛けていくところにあります。会社の製品やサービスを買ったときは、顧客の側がその違いを発見すべきなのです。

お手本となる航空会社の例はサウスウエスト航空です。彼らはごく単純な低料金と親しみやすくて楽しいサービスで有名ですが、顧客の期待を裏切らない好ましい経験を一貫して提供しながら金銭的な利益も得ています。この40年間、赤字に陥った4半期が1度も無いという事実は、変動激しい航空業界ではまさに驚くべき実績です。

5.成功を台無しにするな

勝利の方程式を見つけたら手放してはなりません。変化のための変化は、まったく変えないことよりも有害です。

事業が順調にはじまっても、悪魔は小さな所に潜んでいます。ヴァージンアトランティックが、数年前に昼間の便のアイスクリームバーの提供を何気なくやめたとき、それを経験をしました。搭乗客は誰も気にしないだろうと考えていたのですが、間もなく「私にはアイスクリームを頂けないの?」という不満の声があちこちの搭乗客のから上がりました。
その後、アイスクリームバーがたちまち復活したのは言うまでもありません。

(※)Stainless Stealは、発音は同じだが1字違いで、無傷の盗品という意味になる。
http://www.dailymail.co.uk/travel/article-2046368/Virgin-Atlantic-salt-pepper-shakers-phased-decade-theft.html

(翻訳・オフィス松村)