ブラック企業問題を、経営者の側から見ている貴重な本。秋山謙一郎・著『ブラック企業経営者の本音』

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.059 読書ノートより

●秋山謙一郎『ブラック企業経営者の本音』扶桑社新書、2014年3月

ブラック企業問題を、経営者の側から見ている貴重な本だ。資本の目的は自己増殖なので、搾取率(剰余価値率)をあげようとするのが、資本家の「職業的良心」である。その方法として用いられているのが軍隊的な管理である。

<――入隊式:”お客さん”から”兵隊”へと堕とす通過儀礼(イニシエーション)

入隊式では「宣誓」が行われる。要は自衛官としてやっていきます――という契約の儀式だ。この宣誓を行ったことで、正式な自衛官となったと自他共に認められる。

――入隊式後:”兵隊”としてヤキを入れる

入隊式終了後、参列した父兄などが帰ると新入隊員だけとなる。

このタイミングで教官か先輩が新入隊員に召集をかける。召集をかけられた新入隊員たちは不安と期待が入り交じるなか、ソワソワダラダラとやってくる。

(新入隊員たちが揃ってから……)

教官 今日の入隊式をもって、お前たちは、自衛隊の一員となった。お前たちは今日から自衛官としてやっていくと宣誓した。これは、お前たち自身で行ったことだよな?誰か自衛隊の側から『どうか自衛隊にお入り下さい』と言われた者はいるか?いないよな?そうだ。お前たちは、自衛隊の一員であると、自分たち自身で申し出たわけだ。そして、今日の宣誓で、お前たちは、自衛隊では一番下の階級として入隊することが認められたわけだ。つまり俺たち、上官の言うことに絶対服従する立場だ。わかったな! 返事は?

新入隊員 (……)

教官 返事は”はい”だ。わかったか?

新入隊員 「(新入隊員全員で声を揃えて大声で)はいっ!!!」

教官 今、返事しなかった奴いるな? どこのどいつだ? 全員、腕立て伏せ用意!!

――約1時間程度の腕立て伏せ――

教官 お前ら、腕立て1人でも手抜いたら、全員の連帯責任だ!わかったか?返事は?

新入隊員 「(新入隊員全員で声を揃えて大声で)はいっ!!!」

教官 教官に逆らうと、どういうことになるか。お前ら、わかってるな!

新入隊員 「(新入隊員全員で声を揃えて大声で)はいっ!!!」

こうして、新入隊員たちに「自分から入隊を希望した」「宣誓した」「立場上、一番下」という意識を、まずは植え付ける。もし、この場で「僕は違います」と言い出そうにも、新入隊員全員の場ではとても言い出せる雰囲気ではない。>(50~52頁)

ブラック企業が最近の現象ではなく、旧陸軍内務班の伝統を引く、「由緒正しきもの」であることがわかる。

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・今野晴貴『ブラック企業2 「虐待型管理」の真相』文春新書、2015年3月
・野間宏『真空地帯』(上下2巻)岩波文庫、1956年
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・五味川純平『人間の條件』(上中下3巻)岩波現代文庫、2005年
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佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.059(2015年4月22配信)より