【第84回】 世界的な金融緩和競争はFRBを巻き込むのか?
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米国景気ピークアウトはドル高が原因か

米国経済に変調が起きつつある。3月の非農業部門雇用者数は12万6千人の増加にとどまった。この統計では、前月比20万人以上の増加が、米景気好調のバロメーターとなるが、3月は昨年2月以来の20万人割れとなった。

また、米国企業の景況観を表すISM景況指数は、3月時点で、製造業が51.5、非製造業が56.5となり、いずれも昨年後半以降、低下基調で推移している。景況指数は、50を超える水準であれば、景気拡大を意味するため、現時点ですでに米国景気が失速しつつあるという解釈ではないが、米国企業にとって、景気回復が一服しつつあることを示唆している。

景気強気派は、最近の景気指標の悪化は寒波の影響によるものだと言うだろうが、製造業の新規受注は、寒波の影響を受ける前の昨年11月からずっと前月比でマイナスを続けていることなどを勘案すると、総合判断として、米国景気がピークアウトし始めた可能性は否定できない。

その原因として最近指摘されているのがドル高である。そしてこのドル高に対しては、最近になってFRBも懸念を表明している。

ドル高局面は昨年夏頃から本格化した。米国の貿易相手国の為替レートを貿易額で加重平均し指数化したドルの「名目実効為替レート」は、直近の昨年9月初めから直近(4月10日)までの約8ヵ月間で13%弱上昇(すなわちドル高)している。米国製造業の景況指数の低下は、10月頃から顕著になっているが、悪化が始まったタイミングはドル高と整合的である。また、米国の地域別の貿易動向をみても、日本を除くほとんどの地域からの輸入が急増する一方、インドを除くほとんどの地域への輸出は軒並み減少している。

ドル高の要因はいくつかあると考えられるが、その中で影響が大きかったと推測されるのは、FRBの利上げに向けた政策スタンスの変化とユーロ圏のデフレ懸念、及びECBの段階的な金融緩和(結局、量的緩和政策を実施)であろう(日本銀行が10月31日に実施した追加緩和も影響を及ぼしたと考えられる)。

FRBは、昨年10月までは段階的な量的緩和の縮小(Tapering)を進めてきたが、「Tapering」が終わった昨年11月以降、利上げに向けての準備段階に入った。より具体的には、利上げがスムーズに実施できるように、過去の量的緩和政策で積み上げてきた大量の準備預金(特に法律の定めがなく、金融機関が自主的にFRBに預け入れている「超過準備」)を削減し始めた。

このような超過準備の削減は、各金融商品の市場にとっては、取引需要を支える「流動性(Liquidity)」の縮小を意味する。その影響が顕著にあらわれたのが、より投機色の強かった商品市況であり、その代表格が昨年末に急落した原油市場であったと推測される。

現時点ではそれほど深刻な下落ではないが、米国の株式市場も他国と比較するとさえない展開が続いている。米国株式市場の代表的な株価指数であるニューヨークダウ工業株30種の年初来の上昇率は1%強に過ぎない。これは中国の上海総合指数(約30%)、ドイツのDAX指数(約20%強)、日本の日経225平均株価(13%強)などの世界の主要株式市場の株価指数と比較すると、そのパフォーマンスは大きく見劣りする。

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