賢者の知恵
2015年04月26日(日) 週刊現代

特別インタビュー 瀬戸内寂聴「長生きすると分かる、いい人から先に逝くのは本当だって」(下)

週刊現代
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宇野千代との会話

お墓は、死んだ人のためではなくて、生きている人のためのものです。お墓参りに行けば、亡くなった人に話しかけることができますからね。

火 葬場で焼かれれば肉体は無くなってしまいますが、魂は残ると思っています。これは出家したから思うのではなく、実感として思うんです。なぜなら、仲がよ かった人や肉親については、死んでも忘れないでしょう。人間というのは、辛いこと、悲しいことは忘れるけれども、好きだった人のことはいくらでも思い出せ るんです。そうして思い出して話しかけることができるということは、「存在している」ということですよ。

だから、魂はあると思うんです。死 んだ人の魂というのは、この世で愛した人が幸せになることを願ってくれています。たとえば、残された未亡人が再婚して幸せになることは何も悪いことではな い。死んだ人をいつまでも思ったままで悲しみから抜け出せないよりも、新しい人と恋愛して幸せになったほうがいいんです。

作家の宇野千代さんも98歳で亡くなる最後まで恋愛をしていました。

宇野さんが88歳の時に『婦人公論』で対談をしたんです。私が「女は同時に何人もの男と付き合える」と言うと、宇野さんが「そうよ。何人でも付き合えますよ。寝る時は一人ずつですから」と答えてくれました。あの時は本当に吹き出してしまいましたよ。

その対談の際、聞けるうちに何でも聞いておこうと思っていろいろ質問しました。それで、宇野さんの経歴の中から文学関係の男たちの名前を書き出して、「先生、この人についてはどう思いますか」と言って名前を一つずつ指差すと、宇野さんが「寝た」と言うの(笑)。

そんなことを聞くつもりではなかったんですが、別の人を指差して「先生、この人とは」と聞くと、「寝ない」と言うんです。「寝た」「寝ない」で迷わず選別していって、小林秀雄さんのところに来たら、急に黙っちゃった。

それで、「先生、小林さんは」と聞くと「寝たとも言えない、寝ないとも言えない」と言うんです。

「それって、どういうことですか」と確かめると、「雑魚寝だったから、うまくできなかったの」と言うんです(笑)。文壇のお歴々を「寝た」「寝ない」で片づけちゃう。しかも、そこで挙げた男たちの半分以上とは「寝た」と言ってました。面白い人でしたね。

宇野さんは、98歳で亡くなりましたが、死ぬ前に「なんだかこの頃、私は死なないような気がする」と言いだして、そのすぐ後亡くなられました。

私もこの間、何気なく「私は死なないんじゃないかな」と言ったら、宇野さんの話を知っているうちのスタッフたちに、「そんなこと言わないでください」と叱られました(笑)。

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