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さよならソニー、愛してたのに。
すっかり変わってしまったけど、どうかお元気で (下)

週刊現代 プロフィール

そう考えての決断である。普通に早期退職すれば退職加算金は1500万円程度だが、リストラ部屋に入って早期退職制度を活用すれば、2倍の3000万円に跳ね上がる。そのうえリストラ部屋で再起のための自由な時間が手に入る。彼には自宅のローンや借金もあったから、実際に手に残る資金は多くはなかった。妻と一人娘、それに起業への強い思いがあって踏み切った独立である。

早期退職を後悔しないよう、長島氏はリストラ部屋で独立に向けた整理をしていた。退職金で当面、いかに食いつなぎ、起業につなげていくか。人生のバジェット(予算案)を作り、焦りを抑えた。

「理想工場」を信じていた

彼はいま、電子部品メーカーやITベンチャー企業と顧問契約を結んでいるが、いつかは妻とともに夢の木工工房を開きたいという。すでに第二種電気工事士やDIYアドバイザーの資格を取り、ホームセンターでアルバイト修業も重ねている。

その長島氏が退職してから2年半。ソニーでは依然、リストラが続いている。日立製作所、東芝、三菱電機、パナソニック、NEC、富士通の電機大手6社が、各社の労組を束ねる電機連合との間でベア額を3000円とすることで合意した直後の3月末、数十人のソニー社員が早期退職願を提出した。退職日は4月30日だ。その中には、製造部門のエンジニアや管理職クラスも含まれていた。彼らは上司から厳しい口調でこう告げられている。

「あなたには3月末までは仕事があります。しかし、4月以降は二つの道しかありません。一つは、社内の異動先を自分で探すことです。もう一つは、早期退職プログラムに応募することです」

ソニーでは4月1日から、全社員の4割以上もいた管理職を2割に半減する新人事・賃金制度「ジョブグレード制度」が始まり、降格や大幅な減俸が目に見えている。

「もう、これまでのような退職金や加算金はもらえなくなります。『少しでも有利に辞めるならばこれが最後のチャンスだ』という気持ちが、社員たちに早期退職を促したのです。3月に辞めた数も含めると、かなりの数に達しているのではないですか」と社員は言う。

「もし、この提案を断ったら、キャリアデザイン室に行かされるのですか」。人事部に尋ねた社員がいる。人事部員から明確な答えはなかった。ソニーではリストラ 部屋が強い批判を受けたため、リストラ部屋の在籍者を昨年秋から、PDF作成など単純作業に回しているという。エンジニアのプライドを折られ、朝から夕方の午後5時半まで、来る日も来る日もPDF作りだ。

本社から離れた場所で、新たなリストラ部屋が誕生しているのだ。

だが、そこにも会社がすくい上げられない人材がいる。「理想工場」と信じて入社し、職場復帰や再起を目指して歯を食いしばっている人々だ。

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「週刊現代」2015年4月25日号より


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