原発再稼動も「粛々と」?

『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より

高浜原発3号機---〔PHOTO〕gettyimages

4月14日、福井地裁は、関西電力高浜原子力発電所3号機、4号機の運転を差し止める仮処分決定を出した。これにより、仮に関電が同地裁に異議申し立てを行っても差し止めの効力が維持されるため、当分の間、高浜原発の再稼動ができなくなってしまった。

結論が出るまでにはかなりの時間を要すると見られており、関電が計画する11月再稼動は難しくなってきた。昨年の大飯原発の再稼動差し止め訴訟では、住民側が勝訴したが仮処分ではなかったので、関電の控訴によって、判決の効力がなくなった(再稼動は可能)のに比べれば、この決定ははるかに大きな意義を持っている。

その内容はすでに大きく報道されているので詳細は省くが、一言で言えば、原子力規制委員会が定めた新たな規制基準が「緩やか」すぎて、この基準に「適合しても」「原発の安全性は確保され」ず、「新規制基準は合理性を欠く」のでその基準に「適合するか否かについて判断するまでもなく」差し止めを認めるべきだというものだ。

この考え方に立てば、現行の規制基準で審査している限り、それに適合しても何の意味もない。従って、この夏の再稼動を目指している九州電力の川内原発はもちろん、すべての原発は再稼動できないことになる。

必要なのは、まず、規制基準を根本から作り直すことだ。もちろん、今よりもはるかに厳しい基準にしなければならない。

そうなれば、それに適合するためには、大きな補強工事などが必要になり、かなりの時間と多額の資金が必要になる。その結果、再稼動できない原発が続出するだろう。

この決定に対して、関電は直ちに「承服できない」というコメントを出した。報道ステーションで、私の発言に異を唱えた古舘伊知郎キャスターが思わず口にした言葉だ。不都合な真実を突きつけられると使いたくなる言葉なのだろうか。

今回の決定を「厳しすぎる」とか「非現実的」などと批判する向きもあるが、規制基準が不十分なものであることはこれまでも繰り返し指摘してきたとおり、専門家の間ではむしろ常識となっていた話だ。

マスコミがそれを報じないので、一時は「世界最高の安全基準」という言葉が独り歩きしたが、その後、政府自身も「世界最高『水準』の」と言い換え、さらに規制委も再稼動が近づくにつれ、「『安全』基準ではなく『規制』基準に過ぎない」ということを強調し始めた。つまり、日本では原発の安全について誰も責任を負わない体制なのだ。

驚いたのは、菅官房長官の言葉。この期に及んでもなお、福井地裁が「合理性を欠く」とした新基準について、「世界で『最も厳しい』と言われる新基準」と言及し、再稼動を「粛々と進めていきたい」と述べた。「粛々と」という言葉は、沖縄の辺野古基地建設の際に使って「上から目線」と翁長知事に批判されて封印した「話題の」言葉だ。この言葉をあえて使ったのは、どんなに反対があっても完全無視で、原発再稼動を強硬に推進していくという宣言だろう。

統一地方選前半戦の勝利でさらなる暴走を始める安倍政権。司法でさえもこれを止められないのだろうか。

『週刊現代』2015年5月2日号より

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