小泉堯史&上田正治 第3回
「黒澤さんはいつも『ぼくは芸術家と呼ばれるよりも職人と呼ばれたい』と言っていました」

撮影:立木義浩

第2回はこちらをご覧ください。

シマジ 映画作りでいちばん大切なのはシナリオとキャスティングだというお話がありましたが、シナリオというのはどのくらいの時間をかけて完成させるものなんですか? 半年くらいはかかるんでしょうか。

小泉 いやいや、そこまではかかりません。書きはじめたら、順調にいけば1ヵ月くらいで完成します。黒澤さんもだいたいそのぐらいのペースで書かれていましたね。

わたしもまず自分でノートを作り、それを基にシナリオ作成にとりかかります。たとえば今回のように『蜩ノ記』をやろうと思ったら、はじめに原作者である葉室麟さんの小説を読むんです。『銀漢の腑』だったり『秋月記』だったり、作品を通じて葉室さんの世界観をできるだけ掴んでノートに書いていくんです。

シナリオに関しては、順調なときはペラの200字詰めの原稿用紙に1日10枚くらいのペースで書いていきます。完成した状態でだいたい200枚ぐらいですかね。250枚はいかないと思います。調子がよければ3、4週間で書き上げられますが、どこかで止まってしまうこともときにはあります。

シマジ 詰まったときは前に書いたものを読んだりするんですか?

小泉 はい。どこかで詰まると元に戻って最初から読み直してみるんです。まあ、その繰り返しですかね。

シマジ 映画の脚本のことはわたしにはよくわかりませんが、セリフだけで書かれるんですよね。

小泉 人によっては箱書きといって「シーンごとの箱」を作ったりもするんですが、黒澤さんは頭からじっくり書いていく方でした。登場人物が動き出すのを待って、最初からじっくり書く人でしたから、読んでいて愉しんですよ。